釧路管内の標茶から東へ進み、北方領土を望む町、標津へ至った旧JR標津線。
 その鉄路の痕跡を偲ぶ場所が日本有数の酪農の町、別海町は西春別地域に存在する。
Information
路線: 北海道道423号 西春別停車場線
起点:野付郡別海町西春別駅前寿町(旧標津線西春別駅跡)
終点:野付郡別海町西春別駅前栄町(R243交点)
延長:537m(実延長)
沿線:別海町西春別駅前地区、旧西春別駅跡(鉄道公園)、陸上自衛隊別海駐屯地 
走行:全線(起点→終点) 2016年10月29日撮影
Report 1/1

 道道423号起点

 旧西春別駅前。道路突き当たりの敷地は学校敷地で、現在は工事中のため大型車両が行き来する。道道の起点はおそらく路側帯の白線が切れているあたりになる。

 見慣れた形より随分大きな標識が右側に立っているが、これについては後ほど。
 駅跡は路線バスの待合所とバス停が設置されている(待合所は1つ上の写真右側)。JR標津線は国鉄民営化翌年の1989年4月末に廃止、標茶〜標津間は阿寒バスが代替バスを運行している。

 バス本数は6往復半(標津行きが7本)。ネット上で見つけた1978年の列車本数は標茶行きが8本であったからその当時より2往復程度減っていると思われる。
 バス停を後にし、更に歩くと別海町鉄道記念館なる建物が現れる。その手の建物としては珍しく、綺麗で現代的なつくりをしている。
 もともと訪問するつもりはそこまでなかったのだが、せっかくなので覗いてみよう・・・あれ?

 この日は土曜日、開館日だったのだが開館時間が15時までと短く、しかも訪問時刻はジャスト15時。タッチの差で間に合わなかった!!
 閉ざされたガラス扉の向こうにエントランスだけ見えたので、レンズを突っ込んで撮影してみる。木の温かみある入口にかつての駅舎の写真が飾られている。
 ちょうどいい位置に館内案内図を見つけたのでズームイン。展示コーナーが各所にあるし、線路の一部みたいなのもあるし、結構見どころの多い資料館なのかも?
 だが、旧西春別駅跡地の見どころはこれだけではない。

 記念館の脇には保存SLそして「別海町鉄道記念公園」の看板。

 ・・・と、工事標識。読めば保存SLの塗装修繕とのこと。しかしSLの真正面に設置するのは個人的に非常に気に食わない。
 保存SLは道内各所に点在するが、ここの保存SLはD51-27号で、あのD51形蒸気機関車に準拠した海外輸出車両である。

 このSLが活躍したのは1949年から、場所はサハリン。引退後、日本に買い戻されサハリンから少しは近いここ別海町で余生を過ごしている。

 外観に関するコメントは他の訪問者のサイトなどを参照されたいが、屋外に保存されている都合上塗装のハゲやサビが目立つ。しかし先程の工事標識のように定期的に手入れが入っているということで一安心。今後も末永く残って欲しい車両である。
 D51-27の後ろには車掌車とラッセル車が連結されている。この車両はキ276、国鉄初の単線用鋼製ラッセル除雪車として1928年から1956年にかけて製造されたキ100形のうちの1両であり、国鉄/JR線で最後まで活躍した(標津線廃止と同時に全廃)うちの1両である。
 この公園は廃駅跡の鉄道記念公園としては結構大規模で、更に続くレールをたどると今度はホームとキハ22形気動車が見える。
 静態保存されているキハ22 239。鮮やかな朱色の塗装が秋空に映える。キハ22形はキハ21形の防寒性能が不十分であったことから寒冷地向けに新設計された気動車で、1960-70年代の北海道のローカル列車に数多く投入された車両である。

 同形式の車両は北海道に12両ほど保存されており、また、下北交通大畑線で3両が定期的にエンジンを動かす動態保存されているという。
 西春別駅の駅名標。美しく塗装されているが、現役時から乗客を見守り続けたのだろうか。
 その脇には他の別海町内の廃駅の駅名標が残されている。ここまで一同に会しているのは少し珍しいかもしれない。
 公園裏にはスケートリンクだろうか、整備された敷地が見える。

 根釧台地の日没は早い。さぁ道道のレポートに移ろう!

 道道423号起点

 今度は道道の方を向いて撮影。左手に駐車場が、右手にAコープがある集落の中心地だ。

 そして左手にそびえ立つ道道標識。
 いつも見るものより大きいですよね!
 これは気になりますよね!!
 これが根釧エリア、というか標津・中標津・別海の三町でしか見られない特大道道標識です。

 特徴としては、路線名と「起点」(終点ver.もあり)がでかでかと書かれており、全体的に縦長な形状となっている(そもそも全体的に大きいが)。そして下についている補助標識が面白い。
 補助標識に「起点」の文字、そしてそれを表す●と↑が描かれている。この場所から道道が始まることがまさにひと目で分かる。

 まるでトレース者に対する配慮まで感じる親切設計が、こんなところに滲み出ている。
 さて、トレースを始めよう。
 歩きはじめて程なくして、ちょっと大きな交差点にぶつかる。左側の「わたなべ商店」はレトロな外観をしているがまだ現役である。標津線が現役の頃は駅前商店だったのだろうか。
 
 r423の標識が再度登場する。注目すべきは補助標識。「大成西春別線重用区間」の文字が良い。
 ほとんど場所が変わっていないが、交差点の様子。交差点の向こうには郵便局と酒屋。

 廃駅に限らずローカル駅前にある商店はAコープなどスーパーを残してなくなってしまうことが多い。しかし西春別駅前地区は陸上自衛隊の駐屯地や大手乳業メーカーの工場が近くに立地し、別海中心部に次ぐ規模の集落である。まだまだ個人商店が元気に営業できる余裕がありそうだ。
 先程の交差点を右折する。ちょっと逆光なので補正をかけてます。
 とはいえシャッターの閉じた商店も存在している。標津線が現役だった頃はもっと賑わっていたのだろうか。
 左折:r423 根室 別海市街 R243方面
 直進:r957 国道243号 泉川

 r423とr957大成西春別線の重用区間はこの先の交差点まで。r423は左折する。

  余談だが、R243は西春別駅前エリアの「碁盤の目」に対し斜めに走っているので直進しても左折してもR243と交差する。直進するとすぐにR243とぶつかった後r830泉川線となり別海町南西の地区泉川に至る。泉川から先に通り抜けるめぼしい道は無いので、標茶方面はR243を右折するとよい。
 交差点には一灯式信号機が設置されている。交通量は少ないが確認を。
 左折して終点方面を望む。

 左側には今では数少なくなってきた金物屋さんが営業を続けている。
 更に直進する。

 道道423号終点

 直進:R243 根室 別海市街
 右折:R243 弟子屈 虹別

 r423終点の案内標識。虹別はここから約9km離れたR243/r13交点付近の集落。そしてここにもありますね。大判標識が!
 終点交差点の様子。R243はこの交差点で右手前から奥へゆるくカーブする。大型車がビュンビュン通り抜けるが、交差点はとても広くそのエンジン音もさほど大きくない。
 せっかくなのでズームで新旧両方の道道標識をぶち抜いてみる。

 大判標識にピントが合わなかったかもしれないが気にしない。補助標識の「終点」表記は先程の起点表記と同じように●と↓を駆使して表現している。小粋だ。
 ここまで強風の吹き付ける中歩いて撮影してきた。車は駅跡前の駐車場に停めてあるので、来た道を引き返そう。
 左折:r957 国道243号 泉川
 右折:r957 上春別 計根別

 この先を横切る道はr957・・・、右折すると重用区間でr423が優先されるはず・・・だが、この標識ではr957表記となっている。

 r423は今や廃駅に繋がる路線で、特に目的地があるわけでもない。r423をあえて表記する理由はないと判断されたのだろうか。
 交差点脇に道道標識があった。
 せっかくなのでまたズームしてみる。

 少し左にずれた路線番号、そして補助標識。r423は右折方向であることを示す赤い矢印、少ないスペースに詰め込んだ「大成西春別線重用区間」。私の好みな味と親切みのある標識だと思っている。
 信号交差点を右折。
 逆方向から来ると全く案内が無いが、r423はここで左折。

 斜め向かいに西春別郵便局が見える。
 道道423号起点

左折するとすぐに道道標識。

 左奥にはAコープ、右奥には旧西春別駅の敷地。同じく右奥バス待合所の脇に、例の大きな道道標識が立っているのがこの写真でも何とか見える。

 勢いで往復してしまったが、これにてr423のレポート終わり。
Impressions
 SL好きの人にとっての大井川鐵道のような動態保存、秘境駅趣味の人にとっての小幌駅、人によってそのロマンの形は様々だが、北海道道を始めとする都道府県道を追い続けている私にとっては、別海標津中標津にある「大型の道道標識」はロマンとするものの1つである。
 大判だからこそ漂う威厳、字体から溢れる独特の雰囲気と親切心に満ちた補助標識。
 良さをわかっていただければ嬉しいが、そうでなくても構わない。とにかく私にはグッと来るものがある。

 沿線に目をやると西春別駅前地区は思っていたより規模が大きく、古い店もまだ現役だったりする。
 移住促進の進んだ別海・中標津エリアも近年その人口は減少に傾き出したが、集落の力を失わずこれからもこの地域らしい元気な町が残っていて欲しいものである。  

Links
 特になし。


都道府県道レポート一覧へ戻る
蒼の街道トップページへ戻る


最終更新日:16年12月29日