道南最大の都市にして、北海道第3の都市、函館。
 北海道では珍しい、市電走る道道が漁港と街を結ぶ。
Information
路線: 北海道道457号 函館漁港線
起点:函館市入舟町(函館漁港)
終点:函館市末広町(R279交点)
延長:1,619m(実延長)
沿線:函館漁港 函館どつく 函館市電函館どつく前-末広町駅 旧函館区公会堂 他 
走行:全線(起点→終点) 2016年7月29日撮影
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 函館漁港

 函館山の北西側、外国人墓地の北に位置する函館漁港は、函館市内に20ある漁港のうちの1つであるが、その中でただ2つ第3種漁港に指定されたうちの1つである。

 函館市は市町村合併により函館市街〜南茅部という広域な自治体となった。もう1つの第3種漁港は臼尻漁港(旧南茅部町中心部)であり、海域としては津軽海峡というより噴火湾に近い場所となる。
 道道457号起点

 漁港の少し南側にある交差点がr457の起点となる。写真は起点から道道を望む方向となる。

 第3種漁港は「その利用範囲が全国的なもの」として定められており、ここに停泊しているイカ釣り漁船は必ずしも地元のものとは限らない。函館漁港は漁港としての歴史も長く、石積防波堤の着工は1896年のことである。ここでは漁港まで観察する余裕がなかったが、人気の少ない穴場でありディープな函館を楽しみたいなら一見の価値はある。
 漁港脇にはめぼしい標識もなく、道道オーラが非常に薄いが、交差点の脇に立っている街路灯に北海道のステッカーが貼ってあることから、道道であることが確信できる。
 函館といえばイカ、この日は7月末、イカ釣りも最盛期。撮影時間帯は午後なので既に漁を終えているが、港には多くの漁船と生け簀が置かれており、賑やかな漁期を思わせる風景だった。

 夏場に旬を迎えるイカは真イカ(スルメイカ)である。他にホッケや真昆布が旬を迎えている。
 生け簀の下には猫が潜んでいた。暑い日の猫は日陰に潜ってますよね。

 この日は函館では珍しく30℃を超える真夏日であった。海に突き出している故か、函館の夏はそこまで気温が上がらない。2015年の真夏日観測日数は3日、2016年は5日、2017年は4日である。
 港からは住宅地方向に何本か別の通りが伸びているが、その中でもひときわ目立つのが道道より1本南、入舟町を横断するこの通りである。

 水産業者だろうか、個人商店だろうか、木造とトタンの目立つ市街は非常に函館らしさがある。

 漁港沿いをまだまだ歩く。
 港の北端に位置する十字路で道道は右へ曲がる。タイヤの跡が非常に分かりやすい。
 交差点を振り返ると、函館山をバックに漁船のひしめく函館漁港がそこにある。ああ、函館の夏はいいなあ。
 港にほど近い入舟町エリアを進む。
 道道と言われればそんな気のする程度の道。道道標識は見当たらないので多少不安になるかも知れないが、この道で正しいのだ。
 ここで横断歩道のある交差点。

 ここを左折すると、造船所である函館どつく敷地の西側に出る。

 函館どつく(ドック)は船舶・艦艇の設計、製造、etcから橋梁、各種鋼構造物、産業機械の制作を行う企業であり、1896年創業、現在は函館に3つのドックを抱える函館造船所を、そして室蘭にも造船機能を備える室蘭製作所を保有しており、函館の経済はもちろん、北海道内での船舶産業を支えてきた企業である。
 更に進むと、広めの交差点とともに函館市電 函館どつく前電停が道路上に現れる。

 函館どつく前駅は、函館市電5系統の終点であることから、その名前を聞いたことのある方も多いだろうが、見ての通り周囲は観光地感も薄く比較的静かな場所にある。
 時刻表。当サイトで紹介する時刻表は非常に余白の多いものが目立つが、ここはそうではない。

 さすが函館市電とあって1時間に5本、きっちり12分間隔でダイヤが組まれている。
 電停から道道を撮影する。徒歩でこのアングルを楽しめるのは路面電車のある道路ならでは。
 というわけで、ここからは市電のある道路風景が繰り広げられる。

 どつく前行きの電車とすれ違う。写真に写っている車両は724号で、710形電車のラストナンバーとして1961年に製造されたものである。

 函館市電も他の例にもれずラッピングやペイントによる広告が目立つが、この電車は水産加工業者の広告がされている。さすが港町函館である。
 港湾地区にほど近い閑静な市街地が続く。

 函館市街は比較的古い建物が多く残っているイメージだが、新しいマンションなどもポツポツ建設されているようである。
 先程の電車が折り返し、撮影中の私を抜き去っていった。

 このスピード感からお分かりの通り、この道道は徒歩で撮影している。当初は駆け足でササッと撮影しようと思っていたが、30℃超えの暑さで足は鈍った。
 次の電停が遠くに見えてくる。

 しかし市電の走る道というのはどうしても車道が狭くなる。電車は軌道区域ギリギリまで迫ってくるので、さすがに圧迫感を感じるものである。
 市電の電停の手前に、ロープウェイ駐車場への看板が立っていた。

 函館山ロープウェイはこの先1.3km走ったところ、二十間坂の上にある。電車通りだけでなく一本山側の弁天末広通からも二十間坂に向かう事ができるが、特に道路チェンジをする意味はあまりないだろう。
 函館市電 大町電停に寄ってみる。人工島である緑の島など最寄りとなるが、めぼしい観光地は無く、利用者は多くない。

 この電停はカーブ沿いにあり、車道側を通ってみると中々圧迫感がある。
 道道沿いではおそらく最大規模となる商業施設、ツルハドラッグが大町電停の近くにある。

 入舟町から末広町にかけて市街地が広がるが、めぼしい商店はここツルハドラッグと、どつく前電停を少し進んだ場所にあるマックスバリュぐらいである。
 末広町に向かうにつれ、観光地感溢れる案内看板が現れる。

 次の交差点が基坂(もといざか)との交差点になる。この坂の上には旧函館区公会堂そして元町公園がある。逆に海側に行けば函館運上所跡、北海道第一歩の地碑などを経てベイエリア・赤レンガ倉庫に出る。おかげで、この坂から東側は一気に観光客を見かけるようになる。
 基坂との交差点。ここを右折して登ると、「函館」の由来である宇須岸館跡とともに広大なバス駐車場を抱える元町公園と、旧イギリス領事館、旧函館区公会堂といった歴史的建造物が多いエリアに入る。

 なお、筆者は中学校の修学旅行で函館を訪れているのだが、ここ旧函館区公会堂は必ず訪問し、担当教員による捺印を受ける「必修課題」の1つだった記憶がある。それぐらい函館観光では定番の場所である。
 交差点の一角を撮影する。ペパーミントグリーンの建物は相馬株式会社の社屋であり、1916(大正5)年完成の正に大正ロマンな建築物である。

 目の前を市電が通っているので、街歩きの楽しみとして路面電車と合わせて撮影してみるのも一興か。

 基坂

 今度は基坂を下から見上げる。広々とした石畳の坂の頂上には、元町公園を挟んで淡黄色の旧函館区公会堂があり、異国情緒溢れる街並みを楽しむことができる・・・のだが、周囲の坂よりだいぶ広いゆえ、だだっ広い印象を受けるかもしれない。

 
 基坂から先は、歩道も広くなるわお洒落な建物も増えるわで、一気に観光地感が増す。

 目の前の電停は、函館市電 末広町電停。元町公園、旧函館区公会堂を始めとする重伝建地区の最寄りとなる。海側に行けばベイサイドエリアにもほど近いことから、観光客の利用が多く、日にちや時間帯によってはこの電停を境に乗客の数は大きく変わる。

 電停からの道路ビューを楽しむ。左手前に見える茶色の建物は、北島三郎記念館である。

 函館には他に、土方歳三、石川啄木、坂本龍馬の記念館があるが、なんと現役歌手である北島三郎が彼らに肩を並べる形で函館に記念館を抱えている。
 左折:R279 赤レンガ倉庫群
 直進:R279 函館駅 湯の川温泉
 右折:八幡通 ハリストス正教会

 北島三郎記念館を過ぎると、r457終点であるR279交点の案内標識が現れる。標識上にはもはや地名というより名だたる函館の名所が詰め込まれている。

 
 道道457号終点

 八幡坂の下にて、港に向かって折れ曲がるR279と交差してr457は終点を迎える。

 R279は函館〜野辺地を結ぶ国道で、津軽海峡に3本ある海上国道のうちの唯一北海道と本州の両方に単独区間を持つ国道である。
 せっかくなので、左折方向を眺めてみる。

 R279はこの先の突き当たりから海上区間となるが、海上区間である函館-大間を結ぶ航路はここ末広町ではなく郊外の七重浜にあるフェリーターミナルとなる。
 今度は右折して八幡坂頂上から写真を撮る。

 青っぽい石畳の途切れている場所がr457/R279交点であり、そこから海に飛び込むR279、そして海の先には記念館である摩周丸がかつて函館駅裏から発着した青函連絡船の姿を今に伝える。

 函館には美しい街並み・景色が数多く存在するが、ここ八幡坂から見下ろすベイエリアの風景は函館を象徴する景色であり、多くの人を魅了するものの1つである。これにてr457のレポートは終わりです。お疲れ様でした。
Impressions
 函館は観光都市といって差し支えないほど多くの人が訪れている。2016年3月に新幹線が延伸して以降、国内外を問わず多くの人で賑わっている。
 撮影日の7月29日もまた、夏休み時期とあって函館の街は賑やかだった。

 しかしながら、郊外ではなく函館山の麓エリアでも、漁港の方に行けば観光客は少なく、落ち着いた市街地が広がっている。函館中心部の観光エリアは、せいぜい元町公園がその西端となっている。

 入舟エリアは多くの人々に感銘を与えるような珍しいものがあるわけでもなく、簡単に「インスタ映え」する景色を撮れる場所ではないが、賑わう市街地から電車で簡単にアクセスできる漁港町でもある。

 有名スポットを一通り「修了」した人たちこそ、是非r457にトライしてもいいのではないだろうか。

Links
 特になし。


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最終更新日:17年12月2日