筆者にとってr881は「ホロカヤントー」って何だ!?というのが第一印象だった。
 走ってみると海跡湖と丘陵のなす美しい風景、そして緩やかな地形を突っ走る快適な道道。
 そして立地は不便ながら「泉質第一」の晩成温泉。隠れた魅力の多い路線だと思う。
Information
路線: 北海道道881号ホロカヤントー線
起点:広尾郡大樹町字晩成(晩成温泉付近)
終点:広尾郡大樹町字晩成(R336交点ではなくR336上)
延長:11,796m(総延長), 9,129m(実延長)
沿線:ホロカヤントー、生花苗沼、晩成温泉、旧晩成社跡 他
走行:単独区間全線(起点→終点) 2019年5月11日撮影
Index

 北海道道881号ホロカヤントー線 第1部 [起点(晩成温泉)→晩成社跡]
 ホロカヤントーというインパクトある地名。その正体は太平洋岸の海跡湖。

 北海道道881号ホロカヤントー線 第2部 [晩成社跡→終点(R336上)]
 十勝開拓の祖、依田勉三率いる晩成社はここ大樹町に入植した。
 苦労の歴史に思い馳せ、平坦な酪農地帯を国道に向かって走る。

Report 1/2
ホロカヤントー

 路線名になっているホロカヤントーとは太平洋岸にあるこの湖の名前である。アイヌ語訳は「後戻りして陸に上がる沼」であり、成因である海跡湖がそのまま名前となった格好だ。

 この道道に沼の名前が付いていることから、r881は道道の認定要件のうち「主要観光地と国道を結ぶ路線」として認定されたと考えられる。観光地というほどではないがこの沼は冬期になると全面結氷し、遊漁料を払えばワカサギ釣りを楽しむことが可能である。また、撮影地点の丘には道指定遺跡のホロカヤントー竪穴群という縄文時代の遺跡がある。

 ホロカヤントーを見下ろす丘から林道を下れば、すぐに海岸に出ることが出来る。奥に見える山脈は日高山脈。広尾港のあたりまでは、こうした緩やかな海岸が延々と続いている。

 ここから舗装路になるが、この道はまだ道道ではない。

 ホロカヤントーで行き止まりになっていた道路のもとを辿っていく。道東太平洋岸には長節湖のように他にも海跡湖が見られるが、ここはただ湖があるだけはない。

 程なくして、沿線に晩成温泉の入浴施設が現れる。

 大樹町中心部からかなり離れた場所にあるが、常に一定数の地元客が入浴している。それもそのはず、この温泉はヨウ素を豊富に含む珍しいお湯が湧いており、入浴するとヨードの匂いがきついもののかなり温まるので癖になる。

 晩成温泉の向かいには晩成の宿という宿があるが、正式には「学童農業研修センター」といい公共の宿といった風情である。宿泊費は入浴料込で素泊まり4,000円。これで12畳ぐらいの和室になるというのだから安いは安い。

 温泉施設には2組のツバメのつがいが巣を作っていた。実を言うと道内でツバメを見たのはほぼ経験が無い(通算20年以上住んでいるのに・・・)。聞けばシベリアにも飛来しているというので北限はもっと北らしいが、、、こんなところでもツバメが繁殖しているんですね。

道道881号起点

 晩成温泉前をそのまま突き抜けて行き着いた丁字路がr881の起点となる。道道はここを左。

 左折してみると周りにはなにもない。

 晩成温泉は1980年に開業した町営の温泉で、それまでここは牧場が点在する丘陵部から離れた何もない海岸だった。温泉の存在を把握した道路工事の調査技師の進言で活性化策として開湯したという。

 一発目の道路標識が現れる。ホロカヤントー線という独特な名前が書かれているだけだ。

 雑木林の向こうは開けている。

 上り坂を上がると晩成地区に広がる牧草地と牧場を望むことが出来る。

 r881はホロカヤントー周辺〜現在地〜後述の旧ルート沿いに広がる晩成地区と、現起点付近の生花地区の2つに跨っている。起終点はどちらも晩成であるにもかかわらずだ(意味深?)。

 撮影日は5月11日、周辺の牧草地もだいぶ緑色を取り戻してきた。

 直進:広尾 国道336号
 右折:r881 生花

 この先の交差点でr881は右折する。R336大樹・広尾方面へは直進が最短ルートとなる。

 1976年の路線認定当初、r881はこの交差点を直進していた。このルート変更がされたのは1991年10月のことである。

 交差点の様子。ここを右へ。

 先述のルート変更と同時に、起点位置が3枚上の写真の十字路から現在の晩成温泉そばの交差点に約1km移動した。r881の古い道道標識が旧起点より生花寄りに1枚だけ存在している。

 右折した先では高台を登っていく。r881は路線名標識が結構多く、ホロカヤントーという単語がひたすら強調される。

 周囲は牧場と雑木林が交じる。

 津波浸水予想地域の標識。決して低いところを走っているつもりでなくても、浸水可能性があるのがこの辺りの怖いところ。

 この先r881は谷筋を1つ跨いだ後一旦高台となるが、その先はもう1つの海跡湖、生花苗沼にほど近いところを通る。また、ハザードマップ作成時に想定した津波の高さは20mという巨大なものであることも留意しておきたい。

 雑木林を抜ける途中に、1箇所林道らしき入口がある(画面右、赤い旗があるあたり)。看板によると野鳥観察施設があるというのでちょっと見てみよう。

 右折して入ると1.5車線幅の舗装林道となる。路面状態からして交通量はかなり少なそう。

 1km余り林道を進むと野鳥観察施設案内図とかかれた看板と数台分の駐車場が現れる。どうやら生花苗沼にやってくる野鳥の観察小屋らしく、駐車場から少し歩くようだ。

 200mほど林間ウォークをするとこんな小屋にたどり着く。人の気配がまったくなく、正直少し怖い。小屋というよりは東屋であまり風も避けられ無さそうだが木々越しに生花苗沼の水面が見えておりロケーションは悪くない?

生花苗沼

 遊歩道は沼の手前で途切れるが、藪が低くなっているところをたどれば水面の近くまで行ける。

 生花苗沼はオイカマナイトウと読む。アイヌ語→日本語訳は「波が越えて入る」であり、沼と海を隔てる砂州を波が越えている様子からついたのだろう。これもいかにも海跡湖らしい言葉が使われている。

 道道本線に戻る。

 生花苗沼のそばを通るこの辺りは標高6mのようだ。津波発生時の避難場所は晩成地区においては旧ルートの終点付近(R336交点)にある晩成福祉館という会館になる。

 撮影地点付近から避難する場合は生花または晩成の近い方に車を走らせる(R336生花市街は避難所になっており、道道経由で内陸に避難可能)ことになるが、後述の旧晩成社のあたりまでは晩成のほうが近かったりする。

 4KP。単独区間の半分弱を走ってきたことになる。

 上り坂を登って・・・、

 牧草地を両脇にカーブする。青い空と緑の牧草地、紅白の視線誘導柱。これぞ道東の景色!?

 まだまだ同じような景色が続きます。

 大規模な牧場の牛舎が奥に見えてくる。

 この牧場は十勝農業組合連合会 湧洞牧場という牧場である。運営する「十勝農協連」は十勝管内24農協の「連合会」で、この牧場では422haもの放牧地を使って乳牛の預託・育成が行われている。

 湧洞牧場を過ぎたところで、右に1本の道路が分岐する。ここが依田勉三の晩成社跡への入口である。

 晩成社跡とr881の続きは第2部へ。

最終更新:2019年7月13日