釧路湿原は、面積約18000haに及ぶ日本最大の湿原である。
 貴重な自然を残すこの大湿原は釧路湿原国立公園に指定され、現在では区域内での開発は厳しく規制されている。
 北海道道の中でこの釧路湿原を突っ切る唯一の路線がr1060クチョロ原野塘路線である。
 湿原内の未舗装区間は人工物が非常に少なく、サファリパークのようにも見えるこの道。早速、レポートしてみよう。

Information
路線: 北海道道1060号クチョロ原野塘路線
起点:川上郡標茶町クチョロ原野北19線西(r243交点)
終点:川上郡標茶町字塘路(R391交点)
延長:10,167m(総延長)
沿線:コッタロ湿原展望台、塘路湖、JR塘路駅 など
走行:全線(起点→終点) 2017年5月28日撮影
Index

 北海道道1060号クチョロ原野塘路線 第1部 [起点(r243交点)→ コッタロ湿原展望台]
 釧路湿原の北側に広がる酪農地帯から、東に走りいざ湿原へ。
 特別区域に入る直前、高台には湿原を望む展望台。

 北海道道1060号クチョロ原野塘路線 第2部 [コッタロ湿原展望台 → 終点(R391交点)]
 湿原展望台から先は未舗装。周囲に人工物は無く、平坦な湿原を突っ走る様はサファリパークのよう。
 途中、ゆったりと流れる釧路川が見えるのも良い。

Report 1/2
 直進:阿寒 阿寒湖温泉 釧路
 左折:塘路湖 コッタロ湿原展望台

 r243阿寒標茶線を阿寒方面へ走る。r1060はこの先の交差点を左折だ。

 道道1060号起点

 塘路湖、コッタロ湿原展望台はここを左。

 r1060の方面案内はこの2地点しか描かれていないが、塘路経由で厚岸方面へ抜ける際などは一応使える道である。といっても、標茶からなら別の道道で、阿寒からなら釧路を経由したほうが楽なので、この道を抜け道として使う状況は限られる。。
 塘路湖 11km
 コッタロ湿原展望台 3km

 左折するとすぐに、一連の標識が待ち受ける。左側に倉庫らしき建物も見えるが、この道道の沿線にある人家は交差点脇の1軒のみ、建物はこの辺りを除けばコッタロ湿原展望台の1箇所のみである。
 道路情報掲示板。

 工事現場で使うような仮のバリケードも脇に置かれている。2016年夏の大雨によって道東では非常に多くの道道が一時通行止めとなり、現場では対応に迫られたことだろう。
 ここからはほぼ無人地帯となる。
 この辺りでは道路脇に幾らか耕作地が見られる。
 左側には広大な牧草地が見られる。時期的には一番草を刈り取った直後であるため、少し緑が薄い。
 しばらく木々に囲まれる。
 
 縦型の道道標識が再度登場する。

 右側が開けているが、航空写真では畑っぽいものが確認できる。デントコーンだろうか?
 それを最後に道路は徐々に原生林に囲まれる。
 釧路湿原国立公園

 酪農地帯をちょっと走り抜けると、いよいよ国立公園区域内に突入する。ここから先、道路の質が明らかに落ち、道路上には木々が生い茂るようになる。

 国立公園区域内では道路管理のレベルが違っているのだろう。
 路側の白線がなく、道路上は木々に覆われる。

 明らかに道路の格が落ちているのがお分かりだろうが、ここは国立公園内。r1060はその縁を走るわけでもなく、特別区域もろとも横断する
 特に大きな山を越えるわけでもないが蛇行を繰り返す。

 旧来の線形のままで、もはや改良も難しいのかもしれない。

 余談だが、クチョロ(久著呂)の開拓は1904年、青山奥左衛門率いる入植者らによって始まった。現在のように道路網が発達する以前は殖民鉄道による輸送が盛んであり、1930-1965年にかけて、久著呂-塘路間も、この道路と少し距離を置いて並走する形で殖民鉄道が走っていたという。
 ところで、この写真の周辺は湿原に続く広大な森林・・・と思いきや、実はそうではない。

 航空地図で見ると、西側に久著呂の酪農地帯、東側に久著呂川に沿って湿原が広がり、r1060は酪農地帯と湿原を隔てる森林帯を縫うように走っているのがわかる。
 湿原辺縁部の丘陵には違いないが、それにしても道路はアップダウンよりもカーブがきつい。

 湿原はすぐそばにあるはずだが、それも見えないのである。
 写真では対向車があまり写っていないが、7月の土日とあって観光目当ての車はそれなりに多い。はみ出しに気をつけよう。
 何の前触れもなく道道標識が現れる。地名は標茶町コッタロ湿原。
 標茶町コッタロは釧路湿原の北端部エリアを含む地名で、r243の久著呂-標茶間で通過する地域でもある。この先にあるコッタロ湿原展望台は、字名としてのコッタロ地域の中では最南端にあたる。
 道路が開けると、右側に駐車場のようなスペースが見える。

 コッタロ湿原展望台

 道路脇に駐車場とトイレがある。コッタロ湿原展望台はここから。
 駐車場の奥にはこういう看板とトイレ兼休憩所があり、展望台へはその奥に見える階段を登ることになる。

 休憩所は外と完全に繋がっていることもあり、利用には多少の虫耐性が要求されそうだった・・・。
 そして木道風の階段。

 休憩所裏の斜面を直登し、その後展望台へはグネグネと散策路を登る5分程度のハイキングとなる。
 上の写真の眺望は登りきった先で見える景色で、手前左に見える沼は久著呂川の水が貯まっている場所、右やや奥に見える樹林の帯が釧路川である。ここから釧路川への距離は約1km、人の手の入らないヨシ-スゲ湿原が延々と広がる。

 下の写真は歩道の途中から見えるもので、画面中央奥、樹林の帯として見える釧路川の奥に、湿原を挟んで高台があるのがお分かりだろう。このあたりが釧網本線JR茅沼駅のある台地で、湖面は判然としないがその右隣にはシラルトロ湖が位置する。
 展望台から降りて道道の続きへ向かう。

 この日は暑かった。釧路市中心部は最高気温21.4℃であったが、内陸に入った標茶では29.2℃、釧路湿原の西の端に近い中徹別は30℃と、7月初旬の道東とは思えない暑さであった。

 なお、2週間後の7月15日には中徹別では35.3℃という観測史上3位の猛暑を記録した。
 この先道道はいよいよ湿原内に入り、路面は未改良状態となる。こんな立て看板があったので文章を掲載しておこう。


 この道路は、釧路湿原の生態系の保護を図りながら、出来るだけ現況を変更することなく、維持管理しております。道路の一部に砂利道や路肩の軟弱部分がありますので、安全な走行をお願いします。
 また、湿原の増水時に一部の区間で冠水し通行止めとなることがあります。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
 北海道釧路土木現業所  
Impressions
 釧路湿原内は今や厳重に保護されているというのは知っていたことだが、まさか湿原をもろに貫く道道がここぐらいしか無かったとは。

 区間1は酪農地帯から天然の湿原への移行区間であった。
 道路沿いは牧草地だったのが国立公園内に入り原生林、そして展望台から先は湿原へ。
 少しづつ風景そして道路の状態も変化していくという面白い道である。

 さぁ、第2部区間はいよいよ湿原、私はサファリパーク道道と呼びたいが皆様はどう思うか、お楽しみに。

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 北海道道1060号クチョロ原野塘路線 第2部 [コッタロ湿原展望台 → 終点(R391交点)]
 湿原展望台から先は未舗装。周囲に人工物は無く、平坦な湿原を突っ走る様はサファリパークのよう。
 途中、ゆったりと流れる釧路川が見えるのも良い。


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最終更新日:17年8月14日