茨城r218大塚真壁線の話を聞いたのは2023年になってのことだった。
 ネット上の情報をまとめると、「茨城に荒れに荒れまくった未舗装県道があって、車両通行不能だが通行止めではない。」と。場所は県南部、石岡市~桜川市、車両通行不能ならサクっと歩けばいいじゃない、と、徒歩での踏破を実行した。

Index

 茨城県道218号大塚真壁線 第1部 [石岡市大塚→一本杉峠(桜川市境)]
 観光に地域の足によく使われる主要県道からしれっと分岐して始まる。ちょっと登ればすぐに未舗装路。
 あとは市境である一本杉峠をひたすら登る。全体的に快適だが、たまに通行不能区間の片鱗を見せることも。

 茨城県道218号大塚真壁線 第2部 [桜川市真壁町(一本杉峠西側のすごい区間)]
 r218のアイデンティたる「通行不能区間」。
 荒れに荒れたその姿は、オフ車の聖地と化しておりもはや「遊べる廃道」の領域だが、舐めてかかってはいけない。

 茨城県道218号大塚真壁線 第3部 [桜川市真壁町白井~終点]
 すごい区間を終えると、真壁特産の採石場が目に飛び込んでくる。
 採石場からは普通の道となり、何事もなかったかのような顔をして集落に帰還する。

Report 2/3

一本杉峠

 石岡市-桜川市境にある峠。尾根を走る林道と峠を上り下りする県道が交差している。

 画面奥、3台のバイクが停まっている奥に県道の入口がある。

 この先 車両通行不能

 石岡市でも見た心躍らせるその標識が、桜川市側に下りる入り口にも設置されている。

 そしてその奥に見える県道の姿を捉える。

 これは・・・

 石岡側より明らかに廃れてますね。

 とはいえ、石岡側から来た私はまだ薄々「そうは言っても車両は通れるでしょ」と高を括っていた。実際、石岡側では四輪の乗用車とすれ違っていたし、ダンプらしき轍が延々と続いているのを見たからだ。

 というわけで、桜川市(真壁)側に入る。

 道は石岡側より明らかに荒れている。まだ道路の形は残っているが、轍の雰囲気からして四輪がまともに通っている気配がしない。

 普通、2本の轍が平行して走りその間は草ボーボーになるのが未舗装道路の行き着く姿になるのだが、2本の轍がちゃんと平行していないのである。

 そして第一関門はすぐに訪れる。路盤が大きく削れ、道路が深さ1mほどの窪みになっている。確かにこれでは、普通の車両は通れない。

 ※画像にマウスオーバーで泥沼部分アップ

 撮影前はしばらく晴れ続きだったが、窪み部分は先日の降雨の水が溜まっているようで、泥沼のようになっていた。右側に迂回し県道を下る。

 先程の写真の中央部には境界標らしきものが埋まっている。これだけでは県設置のものかどうかわからないが、境界標があるということはここはれっきとした公道なのだ。

 

 ただし・・・、境界標の右側も左側もバイクの通った跡がある。やっぱり普通じゃない。

 道の真ん中にある境界標に違和感を覚えながらも県道を歩くと、今度は路盤の下に岩が露出し始める。元々まともな砂利ですら無いダート路だったが。路面に岩が露出している県道は私も経験がない。この時点で気分は高揚、ウキウキ県道ハイキングである。

 おもむろに道路の上を水が流れ始める。

 これは洗い越し・・・なのか?と考える。普通の洗い越しと違って、水の流れが道路を横切っていないのだ。だとすると、洗い場ぐらいが適切な表現なのか?と思いつつ水の行先を追いかけることにした。

 道路上を流れていた水は道路脇の低みを流れるようになる。その向こう側にもバイクが乗り入れたらしき道はあるが、どう見ても画面右方向にまっすぐ歩くのが正解だろう。

 よく見ると道路左側にはちょっとした擁壁らしきものが見えるのだが・・・問題はその先。マウスオーバーで怪しいポイントを矢印表示。

 高さ20cmほどの小さな壁が道路と水を隔てている。まともな県道なら水の通り道はもっと深くするし、コンクリート製のブロックなんかで通り道を固めるのがよくある方法だろうが・・・、ここでは石2個分の壁だけ。

 そしてその先、壁を水が流れ落ちる

 あー、道路部分が沢になってる・・・。

 沢の足元はこんな感じ。天気の良い日が続いていたこともあり水の量は少なく、ハイキングシューズであれば問題なく足を突っ込めるレベルだが、そんな流れでも路面を削り取るには十分のようである。

 なるほどこれはヤバい道だ・・・!と感心しながら小さなせせらぎで靴の泥を落とす私であったが、こんなのはまだ序の口だった。

 沢を振り返る。先程のプチ石垣の存在を考えると、画面中央の木よりも左側が元々の道路で、右側は水の流れやオフローダーたちによって「拡幅」された側道のようである。

 道路はしばらく落ち着きを見せる。

 画面奥に停まっているバイクは一本杉峠の頂上で遭遇したオフローダーのもので、肝心のライダーがここからは見えなかった。途中で抜かされたはずなのに徒歩で追いついたということは・・・嫌な予感がする。

 そして次の難所が現れる。路面という路面が失われ、元々埋まっていたであろう岩盤が露出した、渓谷と化した現役県道の姿。

 これは・・・イカれちゃってるな。


 バイクでどうやって下りるんだろ。

 道路の左側には先程道路上を流れていた沢が流れている。ここも岩場の様になっているあたり、さてはオフロードバイクのたまり場になってるな。

 ハイキング装備の私にとっては、こんな路面でも基本的に問題はなく歩くことは出来る。

 いやしかしこれはどう見ても道路「だったもの」ですよ。車が通れる幅の登山道のような何か。

 そんな岩石県道を下りると、今度は路盤が思いっきり崩れた現場。

 上下車線がバッチリ分離されている!!
 いや、路盤が半分崩れているだけか…

 写真は崩壊現場を一旦通り過ぎてから振り返って撮ったもの。先程の渓谷から崩壊カーブまで数十メートルほど難所が続いていた。

 難所をすぎると一旦道路は「よく整備された登山道」レベルのものとなる。もちろん、先程の崩壊現場よりは歩きやすい。

 元々狭かったのが崩れたか埋まってしまったのか、0.8車線ぐらいの幅になっている。

 人の頭の高さぐらいまで木の枝が張っている。バイクで通過する際は頭上にも注意が必要だろう。

 急カーブの手前にひときわ大きい石が落ちている。

 よく見ると・・・、境界標らしきものが横たわっている。いやこれ路面の真ん中に横倒しにして使うものじゃないですよね。

 裏面をひっくり返せば設置主体(県なのか、町なのか?)がわかりそうに見えたが、石の裏をひっくり返すと色々出てきそうに感じされたので結局スルーした。

 第1部でもおさらいした通り、境界標は基本的には道路際に埋まっているものである。こんなふうに横倒しにすることもなければ、真ん中に置くものでもない。おそらく付近にあったものが土砂と一緒に流れたか押し出されて道路上に残されたのだろう。

 境界標のあるカーブを曲がると今度はちょっとした沼地。ハイキングシューズなら平気なので脇を歩いて通り抜ける。

 水たまりには白い花が無数に浮かんでいる。

 県道の路面にはたまに文字が書いてあったり、模様のあるブロックだったり、絵の書かれたマンホールなんかを見かけることはあるが、天然の花柄になっている場所は関東ではこの場所ぐらいだろう。

 下り勾配を歩いていると、休憩所のごとく大きな岩がど真ん中に現れる。

 渓谷地帯からの荒れっぷりを味わってきたゆえもはや何も感じない。せっかくなので岩の上で水分補給して少し休憩とした。

 休憩地点のすぐ先。目の前に横たわる黒っぽいものは丸太?まあ崩れているけどこれは一応道路、そんな風に暢気に考えている私がいました。



 そう、この先のイカれた
 道路「だったもの」を目にするまでは。

 というわけで更に歩みを進める。小さいながらも聞こえる水の音、手前に見える土管。

 この土管は道路の下を水が流れるためのもの、とすると・・・?

 土管の向こうはこの通り。

 道が、

 県道が・・・、

 渓流になっている!!!!

 この渓流カーブを下から撮るとこの様になる。そこそこ急勾配なカーブなのだが、右奥から左手前に向かって伸びる土管が排水路で、カーブの内縁と外縁を縁取るコンクリートが路盤のあった場所だろう。

 本来の姿を察するに、この道はコンクリートの土台によって囲まれた支えられた1.5車線幅程度のダート県道だったと思われるが、おそらくこの土管が埋まり路面が水の通り道になってしまったのだろう、土管より下側が渓流に、そして土砂の溜まったカーブの内側がバイクの逃げ道(=車道)となっている。概念の逆転だ・・・!

 カーブの外側には山を流れる沢が斜面から道路に向かって滑り落ちている。本来はあの「土管」が水道(みずみち)になるはずが、土砂崩れなどをきっかけに埋まってしまったのだろう。

 そんな渓流県道は、コンクリート工が無くなる左側に渓流が逃げることで普通のダート路に戻る。この間数十メートル、先程の花模様の水たまりで汚れた靴がまた綺麗になった。

 渓流カーブを振り返る。普通にみれば左側の壁よりも左側が道路で、ここは沢なのですよ。沢の外側に壁があることを除いては。

 渓流カーブから更に県道を歩くと、またもや土管が路面に顔を出す。

 この土管、土木用語では何というのだろう。自分の知識の無さが申し訳ない。

 もうここまでくるとこの程度ではインパクトを感じなくなるが、県道はもはやただの枯れ沢に成り果てる。果たして普通の未舗装道路を拝む日は来るのか・・・?

 涸れ沢だと思っていてもチョロチョロと水が流れていることもある。ズームで撮るとちょっと不思議な獣道感がして面白い。

 

 そしてまた道路が沢になる。左右の構造物のお陰で、むしろ元から沢だったのでは?と思われるが、GPSを見るとちゃんと県道上をトレースしていた。

 大きな岩場がまた続く。ここは水の流れもしっかりあるので、歩いていくにしても岩場を注意深く渡る必要がある。

 第3?の岩場を振り返る。向かって右側の壁がどう見ても河川構造物。

 第3の(?)岩場を通り過ぎると、今度はまともなダート路が暫く続くのだが…ここで原型を残した壊れ方をしたポイントが現れる。路面排水のためのグレーチングがこの道の元の姿を伝えてくれる。

 山側の斜面から続くグレーチングの長さを推定するに、やっぱり1.2車線~1.5車線ぐらいは確保されていそうなんですよねこの道。一度はちゃんとした県道として整備されたはず。

 グレーチングと排水路は今となっては道路上を流れる水跡を堰き止め、写真のような段差を生み出す仕掛けとなっていた。だいたい50-60cmぐらい削れている。

 先程のグレーチングを下から見るとこんな感じ。ただのトラップにしか見えない。バイクで登るときは山側の平坦なところに沿って走る方が安全だろう。

 そろそろ何かコメントするのも疲れてきたのでしばらく淡々と。

 旧街道の石畳を崩したような路面だ。

 石畳が左右に分岐しているように見えるが、これも涸れ沢が道路上から路外に飛び出しているだけで、県道は左手前から右奥にカーブしている。

 「水源かん養保安林」の看板。そういえばこれまで標識類は一切見かけなかった。

 すでに嫌というほど水源かん養保安林らしさを味わってきたのだが、水攻めはまだ終わりではない。

 ここで車道幅の道が二股に分岐する。当然、県道はどちらか一方。

 まずは右側の様子を見る。洗い越しの先に続く明るい砂利道。まともな道の気配がする。

 左側は沢。

 さて、県道はどちら?

 ここまでお付き合いいただいた皆様なら即答できるだろう、左側の沢である。

 岩の大きさがわかるように背負っていたデイバッグ(無印良品のお手頃バッグ)を置いてみる。

 第1部の石岡側の分岐を思い出されたい。分岐の先が道である限り、まともじゃない方県道であることは険道めぐりでは往々にしてあるのだ。

 ここから暫くの間洗い越し・・・というか洗い場が続く。道路をチョロチョロと水が流れている。新緑が路面に反射して本当に綺麗。

 他サイトではこのせせらぎが凍っていて通るのに難儀した、という報告も見受けられる。廃道歩きは基本的に藪が薄く危険生物のリスクも低い冬にやるものである。

 いつの間にか水は途切れるが、石のゴロゴロした路面は延々と続く。

 ところで先程の沢上流にあった分岐だが、あれを右へ進むとすぐに四輪の通れる砂利道に抜けた後、採石場の間をすり抜けて真壁町長岡の加波山神社の近くに出る。

 途中、オフローダーの遊び場らしき斜面が道路際に現れる。まるでスキー場のツリーランコースのように、コース外の遊び場がいくつもある。

 これまでの道路風景を見ても何となくおわかりだろうが、未舗装県道が一度崩れるとバイクでしか通れないような箇所がいくつもできる。そしてバイクが通ることで岩が露出したり窪みができてバイクしか通れない道ができる、の繰り返しであれだけの難所が生まれる。この県道のオフローダー密度が濃いのはもう1つ別の理由があるのだが、今言えることはこの道はオフローダーによって作られた独特な「荒れ方」をした道であることだ。

 徐々に緑が薄くなる。右側には苔むした立派な擁壁も見える。そろそろ人里も近いか?

 更に歩くと四輪でも入れそうな穏やかな姿になる。

 そして、県道はまともな砂利道と合流する。この後は右へ向かい人里へ向かって降りていく。

 左側には何があるかと言うと、採石場へ続く道が走っている。

 ただし航空写真で見ると開けた空間は見られないので、現在はまだ使われていない/すでに使われなくなった場所なのかもしれない。なお、桜川市真壁町は石材の町として知られており、当地で採れる花崗岩は真壁石として500年前から墓石・供養塔に使用されてきた。現在でも、墓石の生産量が日本で一番大きい産地がここ真壁である。<

 採石場ルートとの分岐を振り返る。こうやって見ると左側(県道)もまともな道に見えるのだが、その先はすぐに路面を流れる水、渓流のような岩場が待ち受ける恐ろしい道である。

 まだ未舗装区間(=通行不能区間)は残るが、ここからは普通の四輪でも走れる道。区間2はここまでとする。

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最終更新:2023年7月8日