占冠村トマム地区は、道東と道央を隔てる深い山林に囲まれているが、石勝線と道東自動車道が通る東西交通の要所である。石勝高原幾寅線は、そんなトマム地区から北側の山を越え南富良野町へと至る山岳道道である。
Information
路線: 北海道道1030号石勝高原幾寅線
起点:勇払郡占冠村下トマム(r136交点)
終点:空知郡南富良野町幾寅(R38交点)
延長:17,580m(実延長)
沿線:幾寅峠、NTT落合無線中継所、JR幾寅駅 他
走行:全線(終点→起点) 2018年9月18日撮影
Index

 北海道道1030号石勝高原幾寅線 第1部 [起点(r136交点)→幾寅峠]
 2016年の台風災害から2年。2018年夏にr1030は遂に復活を遂げた!
 すっきりとした秋晴れのもと、緑深いトマムの山中をドライブしよう。

 北海道道1030号石勝高原幾寅線 第2部 [幾寅峠→終点(R38交点)]
 幾寅峠を越えて南富良野町に入ってからも狭いダート区間が続く。
 しばらくすると道は開け、空知川の流れる小さな町、南富良野町の中心部へ向かって快走する。

Report 1/2

 占冠市街 26km
 国道237号 23km

 r136夕張新得線をトマム地区から西へ向かって走る。星野リゾートもトマム駅も過ぎてしまうとあとは20km以上ひたすら無人地帯を走ることになる。

 r136の道道標識。今回レポートするのはこの道道ではないんですけどね。

 JR石勝線が道道をオーバークロスする。線路は単線。吹雪対策の高い防風柵のおかげで高架橋にしては独特な形をしている。

 石勝線とクロスした後は左手に道東道、右手に石勝線のホロカ信号場を望む。

 前方の高架橋で石勝線は道東道とr136を一挙に跨いでいく。道東道側から見ても山間の景色の良い2車線路といった具合で、道路の上をまたぐ線路が印象的である。

道道1030号終点

 直進:r136 日高 占冠
 右折:r1030 幾寅

 札幌は直進。交差点直後で道東道がr136をオーバークロスしている。

 道東道トマム-十勝清水の開通は2007年のことで、その後2009年にトマム-占冠が開通した。R274から離れた地点での接続であったためこの頃に「札幌」表記が付け加えられたのだろう。

 交差点を右折する。いきなりセンターラインが消える。

 手前に安定の道道標識があるのはいいとして、奥の標識群ですよね。物騒な香りしかしないですよね。

石勝ゲート

 「この道路は、連続雨量100mmを超えると通行止になります。」との表記。この手の道路にしては割と基準が緩い?

 また、通行止に関する標識がもう1枚あることからわかるように、冬期はこのゲートは閉鎖される。

 起点交差点からゲート手前はほぼ除雪されないので積雪期になるとゲートにすらアクセスできなくなる。2018-19年の通行止は2018/10/12-2019/5/17(予定)の約7ヶ月で、通行止期間のほうが長い。道道冬期通行止を見ても、比較的長いクラスである。

 この先通行注意!!
 幾寅方面は幅員の狭い砂利道です

 この先砂利道幅員狭し
 大型トレーラー脱輪続出

 ・・・と、危機感を煽る標識&看板コンビ。これは険しい道路の予感しかしない。ぞくぞくする。

 ぞくぞくするようなゲートを過ぎるとなぜかセンターラインが登場する。

 舗装が荒れていない、通行量の少ない感じが何とも言えない。
 実際、r1030は2016年の台風上陸による災害通行止以来、2018年まで通行止となっており、その間先程の石勝ゲートは閉ざされたままだった。未舗装路だしこのまま万年通行止になるのかな、と思っていたら何と災害箇所が復旧し開通したとの知らせが入った。撮影の1ヶ月ほど前である。

 カーブ。標識が木に飲み込まれそうになる程度には森が深くなってくる。

 カーブの先は景色が開けている。この道道は丁寧にキロポストが設置されている。カーブが終わったところで1KP。

 左側は元牧草地みたいな開け方。2車線が確保されているのも見るともとは誰か住んでいた?

 今回助手席の窓を開けて外を撮ってみる。秋晴れの空の下、風になびく元牧草地は無人地帯道道にはある景色だが、そこに北海道の東西を結んでいるであろう高圧線と鉄塔が通っているのが独特である。

 2KP。例の高圧線をくぐる。

 石勝高原幾寅線
 この先9km区間砂利道
 急勾配 急カーブ 通行注意

 警戒を促す立派な標識が現れる。その向こうにはきれいな白砂利の未舗装路。幅員は約1.5車線幅で、みごとなくびれを露わにしている。たまらんね。

 砂利道となる地点にはこれといった看板は立っていなかった。引き返すならあのゲートしかなかったんだなぁ。

 未舗装路のトレースに入る。もう一段階狭くなるみたい。いいっすね。

 もう1段階狭くなるとこうなる。木陰に佇む3KPが道道であることを健気に主張してくれている。素晴らしい。

 3KP付近から登り傾斜がついてくる。

 3.5KP。この辺りの山林はシラカバ系の落葉樹が多くて意外と明るい。

 1車線余りの未舗装路はまだまだ続く。

 この先幾寅峠の標高は740mある(地理院地図)が、未舗装路が始まった段階で既に標高490mほどの地点であったため、これまた意外と勾配は緩い。トマム側の未舗装路は6.5kmほどあるため、平均勾配は4%にも満たないのである。

 山肌にへばりつくような感じでもないけど地形に合わせて進んでいるのでカーブは多い。

 4KP。場所によってはデリニエータが置かれている。夜に通ることはまず無いと思うけども・・・。

 森林クルージングはうねうねと続く。やっぱりシラカバ多いですね。

 起点の「石勝高原」はトマム駅開業当時の名称であった。石勝高原の名は駅名を付けるための創作地名であったが、開業して6年目の1987年2月、駅名が所在地名(占冠村字中苫鵡)からとった現在の駅名に変更された。

 ここは荒っぽく山を切り開かれて通っているような印象を受けた。

 r1030の認定は1983年3月31日のことであり、ちょうどトマム駅が石勝高原駅と呼ばれていた時期と一致する。r1030の認定根拠は道路法第7条による規定第5号によるとされている。この道路の起点は「主要地・主要港・主要停車場・主要な観光地のいずれか」とある。なお認定年はアルファリゾート・トマムが開業した年であり、人口や乗降客数の条件を考えるとr1030の場合は「主要な観光地」が残る。

 5KP。森林浴は楽しいですが、写真で見ると退屈かも?

 リゾート地の名前がトマムであったことから公共性を考えて「石勝高原」とされたのか、それとも単に駅名がそうだったからなのか、起点名に関する議論は推測の域を出ないが結果的にr1030はトマム駅の開業当時の名前を現在まで伝える恐らく唯一の公共物となった。

 この道でまさかの離合

 狭い。路肩思いっきり乗っけないと無理。対向車の方は慣れた様子で通りましたが、もうちょっと広い場所でやりたかったですね。

 5.5KPを遠くに見る。未舗装区間での離合はこれ以外にもあった気がするが、ここまできつかったのは先程の写真だけ。

 眺望はほとんど期待できないがたまに遠くの山並みがちらっと見えることもある。

 この辺りだけピカピカのガードレールと植栽が施されている。

 恐らく、2016年の災害で被災して復旧工事を行った部分だろう。2016年8月、北海道には1週間に3個の台風が接近し、その後8月30日に渡島半島を1個の台風が接近するという記録的な台風被害に見舞われた。この付近のアメダスは占冠が最寄りとなるが、20日から23日にかけての4日間で約200mmの降水を観測していた。

 直進:厚内 15km
 左折:浦幌市街 6km

 ここでまたまた町道との交差点。左折すると山間部を通り抜けた後、浦幌神社の脇からR38/浦幌市街へ降りることができる。吉野共栄からr1038を通っている我々が使うシチュエーションは考えにくいが、浦幌市街から昆布刈石への最短経路として利用可能だ。

 だがトマム山系を挟んだ南富良野町では8月下旬の連日の雨に加えて台風10号の接近により8月30日に168mmの大雨を観測、8月後半で500mm以上の記録的豪雨となった。南富良野町では空知川の氾濫が発生し人的被害こそ発生しなかったものの農地や工場が冠水し被害を与えた。

 穏やかな森林浴が続く。木々の間から見える青空が美しい。

 この台風災害により南富良野町内を通るJR根室本線東鹿越-新得間は不通となり、2019年4月時点においても復旧するどころかそのまま廃線となる議論が浮上している。
 2018年夏時点ではr1030も同じ道を辿りかねないと思っていた。だからこそ、この道道が開通したと聞いて何としても2018年シーズン内に訪れたかったのだ。

 7.5KPを通過する。

 この辺りは天然の白樺並木?が美しい。ダケカンバではないと思う・・・。

 8KP。9月中旬だからということもあるけど森林が明るくてまだまだ楽しい。

 8KPと8.5KPの間で1箇所だけ景色が思いっきり開ける場所がある。そう、麓で遭遇した高圧線が通っている場所である。

 青空を横切る送電線、その足元は木々の代わりに笹で覆われている。人工物で構成された景色ながら非常に開放的で美しいのである。

 送電線はr1030の通る峠を直線的に登っている。見下ろす景色も雄大な山々を直線的に通り抜ける送電線。ここが未開の山林などではなく、北海道の東西を結ぶ重要なインフラの通る要所であることが認識される。

 8.5KP。山岳区間で唯一開けた場所にある。

 更に進むと南富良野町のカントリーサインが現れる。この道道の峠である幾寅峠まではまだ登るが、町村境はここにあるらしい?

 カントリーサインのモチーフは湖でカヌーをする人。空知川のダム湖、かなやま湖をイメージしているのだろう。

 カントリーサイン直後で右方向に林道が分岐する。ゲートで閉ざされているが、その様子ぐらい見ておこう。

 このゲートから先はNTT落合無線中継所につながる専用の林道である。

 剥げかけた立入禁止の文字と共に、その横には「どの作業員が入山したか」知らせるためのパネル。なおこの林道は終点となる無線中継所まで4.5kmの長さがあり、標高740mの峠から尾根伝いに登り標高1,166mの落合岳山頂付近に至る。途中から雑木林は疎林となり、やがて笹藪のような開けた景色が広がっているようだ。なお落合岳にはトマムスキー場からのバックカントリーとして訪問する人がいるようで、インターネット上で見る訪問記録は夏よりも冬のほうが豊富である。

幾寅峠

 ゲート前のカーブを曲がって進むと今度こそ峠で、右側には転回可能な広いスペースが取られている。

 車を降りて付近を撮りまわっていたら黄色いパトランプをつけた道路パトロールに遭遇した。人気の無い道道では頻繁に遭遇する車だが、まさかここでも。

幾寅峠

 峠にあった占冠村のカントリーサインを撮影。モチーフはツインタワーとトマム山を背景にスキージャンプする人。なお、こんなダイナミックな写真はゲレンデでも細工を凝らさないと撮れない。

 第1部はここまで。続きは第2部

最終更新:2019年4月9日