r1116「富良野上川線」という突飛かつ壮大な路線名にワクワク感を覚えるのは私だけではないかもしれない。
 かつての開発道路に指定されたこの道、結局路線名の通り開通する見込みはなくなってしまったのだが、レガシーと言える山岳区間を多数抱える興味深い道路である。
Index

 北海道道1116号富良野上川線 第1部 [美瑛町字上宇莫別→美瑛町忠別]
 美瑛町のはずれの方、観光地として有名な丘陵からも離れた宇莫別地区。
 夢の大規模道道の端っこは人気のない静かな場所だった。

 北海道道1116号富良野上川線 第2部 [美瑛町忠別→東川町ノカナン]
 旭岳に向かうr1160と重複しながら忠別湖を迂回する。
 1年に1ヶ月だけ走れるという「幻の道道」はその先、チョポチナイゲートから先の山道である。

 北海道道1116号富良野上川線 第3部 [東川町ノカナン→東川町北7線+おまけ(r611)]
 第2部で紹介した道の続きは緑深い山林に佇む線形良好な2車線区間。
 途中の橋梁から上川盆地を遠望できる様子は「幻の道道」の評判と相まってとても有名だ。

Report 2/3
道道213号交点

 左折:r213 旭川 東川
 右折:r213/r1116 旭岳 天人峡

 r213天人峡美瑛線との交点。r1116はここを右折し、しばらくの間r213(と、r1160旭岳温泉旭川線)との重複区間に入る。

 右折すると山間部を直線的に走る2車線路が続いている。

 この左側には忠別ダムによってできた忠別湖があるが、道道から湖を望める場所は限られている。

 ここで湖岸の方へ向かう道路が分岐しているが、先にあるのは廃棄物処理場のようである。

 直線的な道が続く。道路の先に旭岳の山並みが見渡せる。

 ストレートの途中にはチェーン脱着場が整備されている。旭岳温泉の標高は約1,100mあり、この場所よりも600m以上高いところにある。

 カーブ沿いに廃業したドライブインがある。民宿・釣堀もあったようだが廃業したのはずっと前のことだったと思う。

 道路情報表示が現れる。その先に、Y字型の分岐が見える。

 左折:r1160 旭岳
 直進:r213 天人峡

 分岐交差点。r213天人峡美瑛線とはここで別れることになる。左折側は路線番号の若いr1116が優先されるはずだが、道路標識には反映されていない。左折すると旭岳温泉に向かう車の方が多いので(湧水はここを通らないほうが近い)、特に更新する必要性も感じない。

道道213号交点

 「大雪山国立公園」と大きく書かれた看板が目を引く。r213、r1160の両方にアナログの道路情報表示が設置されている。

 旭岳、天人峡はどちらも温泉宿のある観光地である。旭岳は登山客やスキー客で活況な印象を抱くが、天人峡は近年になってホテルが立て続けに廃業・休止に追い込まれるなど厳しい状況が続いている。

 左折してr1160側に入る。旭岳まで12km、ずっと上り坂とカーブが連続するが全線2車線整備されており通年通行可能である。道路案内に「峠走行注意」とあるが、r1160は大雪山系を越える道路ではないので、峠は存在しない。

 左折:東川市街
 直進:r1160 旭岳温泉

 標識には表現されていないが、r1116はこちらを左折する。

 交差点の手前で上忠別橋にて忠別川を渡り、東川町に入っている。

道道1160号交点

 r1116はここを左折する。

 ここからチョボチナイゲートまでの区間は現道活用区間で、元は東川町道であった。

 左折してまもなく、大雪旭岳源水への入り口が分岐する。大きな看板は建っていないが、車の出入りが多いので見つけるのは難しくないだろう。

大雪旭岳源水

 大雪山系の伏流水が湧出している場所で、近年になって公園として整備された記憶がある。

 公園整備と維持の観点に加え、水を汲んでいく利用客が多いことに目をつけてか、「協力金のお願い」と箱が設置されている。訪問時にも100Lは汲んでるだろうという利用者を複数見かけたが、彼らは協力金箱に目も向けずに帰っていった。

 採水場の様子。割と勢いよく水が出ている。味は・・・美味しい天然水だと思った。また、この水は近くの施設でペットボトルに詰められ、町内で天然水として販売されているようだ。

 なお、東川町は上水道がなく、ほとんどすべての世帯で生活用水が地下水で賄われている(菌類の汚染がなく、水道基準を満たしている)。もちろん、水源はこの大雪旭岳源水と同じ大雪山系水である。

 道道に戻ると、七色の噴水に向かう道が分岐する。

 七色の噴水は、忠別湖湖畔で地下水が噴水として自然に湧き出たものという。太陽を背にして噴水を見ると虹が見えることからこの名前がついたらしい。地下水、すごい。

 更に進むと、忠別ダムによって出来た忠別湖を間近に望むことができる。路肩も広くなっているので、路上駐車も大丈夫そう。

 ここまで、地下水に関するヤクモノを紹介したが、この道道自体、地下水の影響を大いに受けている道である。それは通行止理由に関係している。

 忠別湖畔を西に進むと、標識の無い目立たない丁字路が現れる。r1116はここで右側に進路を取る。直進すると町道に入り、東川市街の手前でr1160と合流して旭川方面へ向かう。

 r1116分岐は、画面中央部、黒い車が飛び出しているところである。撮影時は交差点に気づかず一旦スルーしてしまった。

チョボチナイゲート

 右折してすぐの場所に、ゲートが設置されている。ゲート左側の情報表示には「開通」の文字。

 そして、開通期間は「令和2年9月8日11時から10月8日11時まで」。1年に1ヶ月しか通れない。これが、幻の道道と呼ばれる所以である。

 そしてここから先は再び、新規建設区間となる。初めて開通したのは2012年のことであった。

 早速現れる「段差注意」の工事標識。さすがに9月までの通行止は冬季の積雪を理由とするには長すぎる。そこまで通行止期間が長い理由については後述する。

 ゲートをくぐってすぐ、11%の急勾配区間に入る。終点に向かって北上する場合、チョボチナイゲートからはひたすら上り坂が続く。

 道路は1.5車線幅が確保されており、待避所となるような場所はちらほら存在しているがそうした標識はまだ見かけない。

 ここで何か工事をしてますね・・・。

 急カーブと急勾配が連続する。撮影当時は秋分の日の連休だったのと、SNS上でこの道道が注目されてこともあって交通量は結構多かった記憶がある。

 延々と山の中を登り続ける。

 この区間は2005年の事業再評価を経て道路規格を落とすことにより事業継続、工事可能期間が短い中でも何とか工事を進め2012年に開通したが、翌2013年の冬期通行止解除前に地滑りの危険が見つかり(路面にヒビが入るなど明らかな地すべりだったように記憶している)、その年の開通は見送られる。まさかの開通1シーズンで万年通行止めかと思われたが、2017年9月に5年ぶりの通行止解除を果たす。この地域の山間部では10月初旬に早々と冬期通行止に入るため、以降、9月〜10月のみ通行可能という開通サイクルが続いている。

 待避所が現れる。きつい上り坂の途中ではあるが、対向車に気付いたのならここで待とう。

 なお、通行止解除が9月となり理由であるが、地下水位が低下し、地すべりが落ち着くのが9月になるからだという。8月までは融雪の影響で地下水位が高いとのことである(下記リンク参照)。

 9%の上り勾配に入る。少しゆるく感じるが、都道府県道としては本来は規格外の勾配である。

 個人的な話として、この道路の安否に関しては2016年の台風災害の影響も大いに心配していた(地すべり地帯で崩落しようものなら復旧断念しかねないと考えた)が、2017年には通行可能になったことで非常に安心した記憶がある。2016年の台風災害では、r1160重複区間の上忠別橋付近で道路崩落が起こった他、旭川市東旭川町瑞穂でペーパン川が氾濫するなどこの周辺でも被害があった。

 山道が延々と続く。交通量が少なく舗装がきれいなことと、ガードレールが整備されていることから割と走りやすいが、見通しが悪く対向車を気にして走らざるを得ない。

 と、このように、r1116は地下水の恵みも受けられる一方、地下水の脅威に晒されている道であるとも言える。ちなみに東川市街で提供されるコーヒーは地下水で淹れていることもあってか美味しいらしいので、東川市街に戻ってきたらぜひ一杯いただきたいものである。

 この辺りで外見上上り坂が終わっている・・・?

 と思ったが、そんなこともないようである。

 まだまだ1.5車線幅の山道。

 一旦下り勾配に転じる。10%の急坂だ。

 r1116は開発道路の制度を利用して建設が進められた道路である。北海道における開発道路は道路法施行令第32条で指定されたものを指し、市町村道や道道の管理のうち、指定された割合を国が代わりに行うものである(詳細は下記リンク参照)。

 ここで、林業専用道 江卸越支線 という林道が分岐する。使われている痕跡はあるが名前の通り林業専用の道で、管理者は北海道。素人の入るところではなさそうだ。

 この制度は北海道の道路網整備にあたって重要な役割を果たしてきた。道道または市町村道で開発道路として建設が行われ、開通後に国道や道道に昇格した路線が非常に多いのである。

 上り勾配はもう無いのか、と思っていると再び10%の上り勾配に差し掛かる。

 r1116富良野上川線に当該する区間は開発道路白川美唄線として1983年に開発道路に指定され、北海道開発局の事業として整備が行われた。この1.5車線区間は2010年4月に開発道路指定解除されたものの、北海道が事業を引き継ぎ2012年に開通した。

 しかしこんな道、我々道路趣味者と走り屋さん以外誰が通るのだろうか…。こんなに厳しい道で、しかも(想定外だろうが)1年に1ヶ月しか使えないとなると本来想定されていた「観光ルート」「農林産物の輸送」といった役割はほぼ期待できないのではないかと思う。

 上り勾配と下り勾配を繰り返しているが、地図を見る限りだと広大な山地の中でゆるい尾根と谷を繰り返し越えているようだ。

時折見晴らしが良くなるのだけど、少し離れた山並みが見えるだけで人工物の気配すらしない。

 下記リンク先(江田沼音さんサイト)に詳しく載っているが、当初計画どおりのルートであればこの山岳地帯は橋とトンネルで越えることを想定していたようである。仮にトンネル工事に着手したとしても地下水が災いして工事は難航したのかもしれないが・・・。

 結構山道を走ってきたのだが、もう少し走ると1.5車線道路も終わるはずだ。

 上り勾配と急カーブを抜けると、突如として大規模な開削部に差し掛かる。この先、r1116は一気にその姿を変えるのだが、続きは区間3で。

このページの最上部へ   ◇ 都道府県道 路線順一覧   ◇ 蒼の街道トップページ
最終更新:2021年1月17日