r1116「富良野上川線」という突飛かつ壮大な路線名にワクワク感を覚えるのは私だけではないかもしれない。
 かつての開発道路に指定されたこの道、結局路線名の通り開通する見込みはなくなってしまったのだが、そのレガシーと言える山岳区間を多数抱える興味深い道路である。
Information
路線: 北海道道1116号富良野上川線
起点:上川郡美瑛町字上宇莫別(r543交点)
終点:上川郡東川町北7線(r611交点)
延長:28,912m(総延長)/ 26,619m(実延長)
沿線:忠別ダム(忠別湖)、大雪山旭岳源水公園 他
走行:走行可能区間全線(起点→終点) 2020年9月20日撮影
Index

 北海道道1116号富良野上川線 第1部 [美瑛町字上宇莫別→美瑛町忠別]
 美瑛町のはずれの方、観光地として有名な丘陵からも離れた宇莫別地区。
 夢の大規模道道の端っこは人気のない静かな場所だった。

 北海道道1116号富良野上川線 第2部 [美瑛町忠別→東川町ノカナン]
 旭岳に向かうr1160と重複しながら忠別湖を迂回する。
 1年に1ヶ月だけ走れるという「幻の道道」はその先、チョポチナイゲートから先の山道である。

 北海道道1116号富良野上川線 第3部 [東川町ノカナン→東川町北7線+おまけ(r611)]
 第2部で紹介した道の続きは緑深い山林に佇む線形良好な2車線区間。
 途中の橋梁から上川盆地を遠望できる様子は「幻の道道」の評判と相まってとても有名だ。

Report 1/3

 左折:r1116 東神楽 旭岳・天人峡
 直進:r543 6km行き止まり

 r543上宇莫別美瑛停車場線を起点に向かって走る。正面に迫る十勝岳連峰がだんだんと大きくなってきたところで、r1116交点の案内標識が現れる。

道道1116号起点

 r1116の2021年1月時点での起点がこの交差点である。左側へ分岐する目立たない道がr1116である。

 r1116に入る。センターラインも路側帯もない、シンプルな農道である。

 それもそのはず、ここから置杵牛までの区間は、既存道路を活用して整備した区間である。

 民家の目の前に「冬期間通行止」の標識が現れる。

 路線名には「富良野上川線」の文字。区間はこの先の丘陵を越えた美瑛町俵真布までとなる。

 なお、この区間の通行止めは例年11月から4月までの間で行われる。冬期通行止としては割と普通の長さである、というかこのあたりでは通行止解除の時期が早い方である。

 その先、ブルーシートで覆われた2枚の標識が現れる。

 恐らく通行止め標識だろう。ところでゲートは撮影時に撮り逃してしまったのだがどこにあったのだろう?

 ここで、宇莫別川を渡る橋。この先俵真布に至るまでの間、人家は一軒もない。

 山間部に入ると同時に「出没注意」の洗礼を受ける。この道道に走りに来る人達ならこうした文言はすでに見慣れたものだろうが、それでも熊と遭遇するのは避けたいものである。

 山間部に入ると同時に「出没注意」の洗礼を受ける。

 雑木林に囲まれた1.5車線路が続く。普通車同士ならすれ違いできそうな幅があるし、ガードロープもきちんと整備されているので走りやすい。

 見通しの悪いカーブもあるので気をつけよう。。

 比較的快適に走れるこの区間、緩やかな上り勾配は気づけば下り勾配に。

 真新しいゲートが現れる。

 ここが俵真布ゲートである。ここまでの線形を考えると冬期通行止解除が4月上旬〜中旬と早めに設定されていることも頷ける。

 ゲートを抜けると道路は下り坂に。気づけばセンターラインもある立派な道だが、白線が薄れ舗装にヒビが入っているあたり、町道や農道の雰囲気が強く残っている。

 右折:上俵真布5km
 左折:朗根内7km

 ここでr1116は右へ向かう。現地に案内はないので、事前情報がないと把握するのは難しい。

 地理院地図ではここから次のゲートまでの直線区間を道道と表現していないのだが、Google地図でルートをトレースして距離を測定してみると、総延長28,912mは直線区間を含めた長さとほぼ一致する。したがって、このサイトでは連続した道道として扱うことにする。

 俵真布(たわらまっぷ)地区を東へ向かって走る。この道路では正面左側に旭岳を始めとする山並みを見渡すことが出来る。

 俵真布地区は道路沿いに民家が並んでいるのみの地域であり、これといって特筆すべきものはないが、2006年まで俵真布小学校という小学校が存在していたという。

 更に走り進めると集落を抜け、あたりは平坦な畑と深い山々が広がるだけになるのだが、r1116の分岐はまだ先なので安心して直進すれば良い。

 左折:r1116

 ここで、方面表示の全くない案内標識が待ち受ける。直進しても何も無いが左折すれば道道である。

 本来なら「忠別」とか「天人峡・旭岳」とか情報があっても良いのではないかと思うが、こんな道道を走りに来る猛者ならこの表示だけでも十分すぎるぐらいだと感じた。

 分岐部の様子。ちなみに、この道路を直進すると途中からr718忠別清水線に認定された区間となるが、r718はトムラウシ山で分断されており、更に進んだところで行き止まりとなる。

 なお、この交差点はr718とr1116の交点ではない。地理院地図によるとr718になるのはこの先1kmほど走って辺別川を渡ったところとされている・・・のだが、道路現況調書を確認するとr718の美瑛町内区間の開通済延長は3,970mであり、そのうち3,944mが砂利道(残り26mはセメント舗装の橋梁)とされている。この道の1km先は未舗装ではないので、地理院地図か現況調書かどちらかが間違っていることになる。

 左折すると、「冬期間通行止」の「俵真布第3ゲート」の標識が待ち受ける。

 ここの通行止め期間は10月8日から5月6日まで。つまり走行可能なのは5月から10月の5ヶ月間だけということになる。これでも十分短いと思うんですけどね…。

 r718の話の続きになるのだが、r718起点は忠別湖南岸の美瑛町忠別となっており、つまるところr213/r1160との交点であることが想定される。地理院地図ではr1116に並行する狭小林道が道道扱いされているが、恐らくそれは地図の間違いで、林道は道道に認定されていないと思われる。

 「これより2.8km区間は、連続雨量80mmを超えると通行止になります。」

 つまり、あんまりいい道じゃないということを言っている(のだと思ってる)。

 現にゲートの先に見える山並みには、斜面を直答する勢いで登っていく激坂が見えている。

 この写真は中望遠で撮影したものなのでやや誇張されているが、それでもこれはきついと直感させる風景である。

 山間に入る手前は平坦な農地の脇を通るだけの区間だが、そこにも練習場所のように待避所が設けられている。

 なお、俵真布第3ゲートから忠別までの区間は現道活用ではなく2010年頃に新たに建設された区間となる。事業再評価を受けて1.5車線での新道整備が決まった区間で、お察しの通りコストを極限にまで抑えてなんとか開通にこぎつけた道である。

 ゲートから見えていた激坂を登る。勾配を示す標識は存在しないが、この時点で既に11%ぐらいの上り勾配だとか。

 撮影当時は知人の車(MT車)に乗っていた。こんな上り坂で待避させられたら発進は冷や汗モノだが、幸運なことにこの坂道での離合は無かった。

 急坂が延々と続く。開削や路盤整備を最小限に抑えた低コスト工法の結果がこの道である。

 r1116の歴史については既に他サイトでも触れられていることもありこのページでの記載を割愛するが(第2部以降で記述するかも?)、2004年に行われた事業再評価で新規建設区間の見直しと規格変更を行うことでなんとかB/C比(便益費用比)1.0以上を叩き出し、事業継続にこぎつけた結果出来たのがこのクオリティの道路である。なお、r1116はこれ以上の未着手区間の整備は行わない方針である。

 とはいえ待避所もきちんと整備されており、道自体が新しいので走るには困らない。

 時々こういったブルーシート箇所もあるが、あまり気にしないことにしよう。

 そろそろ上り勾配も終わりに差し掛かる。

 秋空を見上げる急カーブを境に、11%の下り勾配という道道らしからぬ坂が始まる。

 斜面に張り付くように下っていく。もちろん周囲に人の気配はない。

 SNSで有名になった忠別湖の北側の区間と比べて、俵真布〜忠別は交通量が少なく静かである。開通期間も年5ヶ月もありますしね。

 下り坂になり視界が開けてくる。画面奥に見える山壁もまた、r1116が貼り付いている斜面のはずである。

 再び11%の下り勾配が待ち受ける。

 急勾配からは忠別湖の水面を間近に眺めることが出来る。というか、ここまで湖が間近に見えると思っていなかったので想定外のいい景色に驚いていた。

 晩成社跡とr1116の続きは第2部へ。

 急勾配からは忠別湖の水面を間近に眺めることが出来る。というか、ここまで湖が間近に見えると思っていなかったので想定外のいい景色に驚いていた。

 晩成社跡とr1116の続きは第2部へ。

道道213号交点

 左折:r213 旭川 東川
 右折:r1116/r213 旭岳 天人峡

 ここでr213天人峡美瑛線との交点(実際は、r1160旭岳温泉旭川線も重複している)。r1116はここからしばらくの間r213と重複して忠別湖を迂回する。

 重複区間の様子、そしてチョボチナイゲートの向こう側「幻の道道」第2部を御覧いただきたい。

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最終更新:2021年1月15日