r806を走った先にあるのが、国内最大の公共牧場、ナイタイ高原牧場である。
 十勝平野と牧草地の大パノラマが楽しめる展望台は、牧場内の道路を道道から分岐して6kmほど走った先にある。
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 北海道道806号上音更上士幌線 本編 [終点(r418交点)→ 起点(ナイタイ高原牧場付近)]
 上士幌町市街地からトレース開始。道道自体は、ナイタイ高原牧場の各施設までの道のりで、牧場内は町道となる。

 北海道道806号上音更上士幌線 おまけ [ナイタイ高原牧場]
 本来は道道ではないのでレポート対象外だが、あまりに景色がいいので牧場内を通る道路もレポートしてみる。

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 ナイタイ高原牧場展望台入口

 全農ET研、ナイタイ高原牧場牛舎の手前で左に分岐する。
 牧草地に囲まれる。道路状態は道道とちょっと雰囲気は異なるが、快適な2車線路が確保されている。
 しばらくは見通しがそこまでよくないが、草地と空の境目はすぐそこに。
 稜線の高さまでやってくると、写真のような清々しい高原道路となる。
 牧場内をひた走る。

 そもそもナイタイ高原牧場とはどんな牧場か。「日本一広い公共牧場」というフレーズは聞いたことがある方も多いかもしれない。が、それは面積の話であって事業の話ではない。
 視界いっぱいに広がる牧草地と山々、そして延々と続く道路はイメージ写真のような絶景を見せてくれる。

 ナイタイ高原牧場自体は国営事業、管理者はJA上士幌町であるが、その内容は「低月齢乳牛を飼い主より預かり、受精させ妊娠牛として分娩間近くなってから飼い主に戻す、育成牛受託専門の牧場」である。
 絶景はまだ続く。雲の影が牧草地になす独特の陰影も美しい。

 当然だが乳牛は分娩をしないと牛乳を生産しない。酪農家が規模拡大に伴い、搾乳に特化するため育成牛管理を預託するケースも増えているという。また、第1部で触れた全農ET研はこの預託とも関わりがある。
 ストレートの先は、カラマツ林が立ちはだかる。

 全農ET研は、ざっくばらんに言うと乳牛に黒毛和牛を産ませる技術を研究・開発している機関である。黒毛和牛の優良血統種の雌牛に優良血統種の精子を人工授精させ、受精卵を回収し選抜・凍結保存する。この受精卵を別の育成牛に受胎させるというのがET、Embryo Transferという技術である。
 ここから大雪山国立公園エリア内に入る。
 絶景をゆっくり楽しめる?駐車帯もところどころに存在する。

 全農ET研は受精卵の管理・販売も行っている。その価格は優良血統の黒毛和牛となれば1個5万円を超えている。
 カラマツ?の印象的な北海道の夏らしい道路風景。
 ここまで高原牧場内を結構登ってきたが、レストハウスまではまだ登る。
 まだ登る。
 もうそろそろレストハウスなはずだが、まだ牧場内道路。
 駐車場への案内看板が現れる。

 駐車場入口

 看板に従って場内に車を停めた。レストハウスより先は基本的に一般車は入れない。
 ナイタイ高原牧場展望台

 駐車場から望むレストハウスと牧草地。

 2015年、強風被害により元のレストハウス(左側)が損壊し、現在は基礎を残して取り壊されている。2017年7月当時は、レストハウスは右側のプレハブで仮営業していた。
 レストハウスの正面数十mの草地は牛ではなく人のために開放されており、延々と続くナイタイ高原牧場とその向こうに大雪の山々を望む。

 ナイタイ高原牧場の牧草地は全部で108の圃場として管理されているという。総面積は約1700ha、その面積は成田空港敷地の2倍弱、東京都新宿区の面積にも匹敵する広大さである。
 南側、十勝平野方向を望む。

 当時は北海道の初夏にしては湿度が高く空気は霞んでいた。この場所は標高約800m、5月や6月のカラッとした青空なら平野が延々と広がっているのがくっきり見えるはずだ。
 「十勝ナイタイ和牛」という看板と黒毛和牛を模したベンチ。

 十勝ナイタイ和牛は上士幌エリアのブランドとして成長しつつある。上士幌町内での一貫生産が行われており、上士幌町内の飲食店や美幌・札幌・東京の「肉の田村」といった店で取り扱っている。

 ちなみに、ナイタイ和牛の種牛生産にも先述のET技術が大きく関わっている。
 ナイタイ高原レストハウス。牛乳を使った乳製品はもちろん、十勝ナイタイ和牛肉を使った食事も味わえる。この景色の上でいただくソフトクリームはきっと最高だろう。
 木製看板とトラクターというちょっとした観光要素もある。
 最後に、パノラマ写真にした牧草地風景と、帰りの道中で見かけた乳牛たち。この場所のすごさは、言葉でも写真でも表現しきれない。距離感と空気感、いずれも日常生活では味わえない清々しさがある。十勝に訪れた際は、是非お越しいただきたい。
最終更新:2018年1月23日