茨城r218大塚真壁線の話を聞いたのは2023年になってのことだった。
 ネット上の情報をまとめると、「茨城に荒れに荒れまくった未舗装県道があって、車両通行不能だが通行止めではない。」と。場所は県南部、石岡市~桜川市、車両通行不能ならサクっと歩けばいいじゃない、と、徒歩での踏破を実行した。
Information
路線: 茨城県道218号大塚真壁線
起点:石岡市大塚字池袋2135番4地先(r64交点)
終点:桜川市真壁町白井543番地先(r41交点)
延長:9,271m(総延長)/ 9,271m(実延長)
沿線:一本杉峠 他
走行:全線(起点→終点) 2023年5月27日撮影
Index

 茨城県道218号大塚真壁線 第1部 [石岡市大塚→一本杉峠(桜川市境)]
 観光に地域の足によく使われる主要県道からしれっと分岐して始まる。ちょっと登ればすぐに未舗装路。
 あとは市境である一本杉峠をひたすら登る。全体的に快適だが、たまに通行不能区間の片鱗を見せることも。

 茨城県道218号大塚真壁線 第2部 [桜川市真壁町(一本杉峠西側のすごい区間)]
 r218のアイデンティたる「通行不能区間」。
 荒れに荒れたその姿は、オフ車の聖地と化しておりもはや「遊べる廃道」の領域だが、舐めてかかってはいけない。

 茨城県道218号大塚真壁線 第3部 [桜川市真壁町白井~終点]
 すごい区間を終えると、真壁特産の採石場が目に飛び込んでくる。
 採石場からは普通の道となり、何事もなかったかのような顔をして集落に帰還する。

Report 1/3

JR羽鳥駅

 上野から特急と普通列車を乗り継ぎ1時間強、JR常磐線で茨城県は羽鳥駅に降り立つ。r218へのアプローチはここからバスに乗ってアクセスすることとなる。

 羽鳥駅は県南の石岡市内にある駅で、周囲には閑静な住宅地が広がる。

 羽鳥駅から石岡市代替バス(板敷山行き)に乗り、25分ほど乗車。小塙台(こばなだい)にて下車する。

 撮影当時、羽鳥駅からのバスに乗ったのは私のみだった。なお、終点の板敷山は石岡市北部に広がる盆地の最奥部にあたり、大覚寺という寺院がある。背後の山を越えると桜川市笠間エリアとなる。

 バス停を後にし、県道の起点まで約3kmのウォーキングとなる。

 水田地帯をまっすぐ走る道。撮影日は5月下旬、吹き抜ける風はまだ涼しく心地よい。

 これから越えるr218一本杉峠は画面中央から右寄りにある山が一段下がったところとなる。※画像にマウスオーバーで解説表示

 水田はまだ苗が植わったばかり。きれいだなー。

 2km強の農道ウォーキングを終えると、一段大きい道に出る。今歩いているのはr64土浦笠間線で、土浦~千代田~柿岡と、土浦市内・石岡市内を北へ走る道である。更に北へ進むと、r64は板敷山を越えて北関東道笠間西IC付近に出る。

 r64と、広域農道であるフルーツラインとの交点。この交差点を左折するといばらきフラワーパークを経て常磐道土浦北IC付近に出る。

 そして、この交差点にはセイコーマートが立地している。北海道ではおなじみのこのコンビニ、茨城と埼玉でちらほらあるんですよね。

 r218をトレースし終えるまで沿線にコンビニは無いため、ここで水分と食料を買い足す。店内はホットシェフ併設の現代的なセイコーマートだった。

 r64をもう少し歩く。ここから国道50号までは9km弱。

 農村部を走る快走路だが、今回はこんな快適な道路をレポートするために来たわけではない。

県道218号起点

 緩いカーブから直線に入るところで、左前方にセンターラインのない1本の道が分岐する。これが、r218大塚真壁線の起点である。

 r218は起点からいきなりセンターラインがない。久々の険道の予感に意気揚々。

 起点交差点の形状から察している方もいらっしゃると思うが、ここからしばらくの間、r218はr64の旧道を辿っている。

 起点を振り返って見る。r64の歩道がそのままr218になっているあたり、元々こちら側しかなかったことがわかる。

 数十メートルほど歩くと、左上にお決まりの県道標識がいる・・・のだが・・・、

 県道標識が藪に食べられかけている。

 補助標識とかほとんど見えないじゃん…。県道標識が荒れているというのもやっぱり険道の気配。

 r64の主要地方道的な雰囲気から一転、いかにも田舎道という1.5車線路に様変わりする。

 道路左側斜面の上にこのような境界標が立っていた。境界標より内側は道路敷地で、外側はそれ以外(多くは民有地)であるという境界を示すもので、これが県設置ならほぼ県道の敷地境界とみて間違いはない。

 この区間ではそもそも県道標識があったので県道かどうか疑う余地はないが、標識のない県道ではトレースの参考となるので説明しておく。そしてこの先も・・・!?

 新緑深まる5月下旬、道路を覆う木陰もだいぶ色が濃くなってきた。

 集落を手前に水田に挟まれた道を歩く。右側の田んぼはまだ苗が植わっていない。

 こんな爽やか農村ウォーキングを約45分続けてきたのだが、そろそろ終わりが差し掛かっている。

 集落に入るとしばらくして交差点。一般県道あるある、標識がなくどの道が県道か全くわからない交差点である。

 この交差点はなかなか難易度が高く、このアングルだと左も直進も歩いてきた道の続きとして適当に見える。

 交差点右を見ると人家の並んだ集落が続くが、これから越える一本杉峠はこちらではない。

 そう、答えは左折である。ここで真壁と石岡を隔てる山に正対する。

 左折した後も県道標識の類はまったくない。地理院地図もGooglemapもない時代だったらあっているかどうか冷や汗をかきながら撮っていたかもしれない。

 徐々に登り坂がきつくなってくる。それにしても左側の紫陽花の木大きいなあ。

 まだ人家が続くが、この奥で林は一気に深くなる。

 そろそろ、来るぞ・・・!

 カーブミラーを境に舗装は荒れ、道路は木々に覆われ薄暗くなる。ついに山間区間入りますね。

 そして、画面中央奥に1枚の標識が見えている。

 この先通行不能
 茨城県土浦土木事業所

 「通行不能」の表示きました・・・!!!!

 今回は徒歩で県道を訪れているので、車にとっては「通行不能」であっても足で越えれば何てことはない。むしろそのために歩いてきているのだから、この言葉はちょっとしたご褒美ですらある。

 そんなご褒美標識をアップで撮影する。ちょっと煤けてますね。

 通行不能標識の数メートル先、右側に六角形のシルエット。

 反対側に回り込んで撮ると…、r218の標識一式が埃を被り苔を生やして佇んでいる。

 道路風景も含めて撮ってみるとこんな感じ。一本杉峠を越えてきた対向車からすれば人家と標識に迎えられ、気分は凱旋ムード一色ではなかろうか。まあ、さっきの交差点で道間違えると県道から踏み外すけど。

 ちなみに、この標識を撮り終わった直後に自転車で峠を降りてきたと思われる一団と遭遇した。一本杉峠に登る手段はr218以外にもあるので、この地域を周回するように走っているのかも。

 先程のr218標識を過ぎるとまた分岐。さて、r218はどっち?

 ちなみに、舗装は左折方向にのみ続いていて、直進方向はダートである。普通に考えればわかりますよね。

 左折しても登り坂だからこっちが県道?

 

 残念ながら、
 こちらは県道ではなく林道である。

 正解は直進。ダートの狭い方が県道である。

 通行不能って土浦土木事業所が言ってるし、険道ではたまにあることなので未訪問でも正解できた諸氏は多いのではないかと思う。
 でも、確証がないと不安ですよね。

 ここから先はついに深い山に入る。左下の「ダンプ通行」という看板が意味深。

 歩いてきた道を振り返ると、ここが山地と盆地の境目に居ることがわかる。正面に見えている山並みは吾国山のあたりか。

 吾国山は、r64の越える峠(板敷峠)とセイコーマート前で交差した広域農道(フルーツライン)の越える峠、道祖神峠の間にある山である。吾国山から東にr280南指原岩間停車場線という、これまた通行不能区間持ちの県道があるのだが、こちらは徒歩だと平野部のアプローチが長くなおかつ峠からの下りが2車線路でかえって歩きにくいことからr218より少し敷居が高い。

 日の当たる里山を離れ、山林へ入る。

 山に入るとき、地元の方に「どこいくの?」話しかけられた。「峠越えて真壁まで行きます」と言うと、「頑張ってー」との優しい声かけ。元々ハイカーの多い地域というのもあるが、行くなと言われないということは特に大きな問題はなさそうだ…と判断して山に入る。

 木立の高い杉林の中をひたすら歩く。路面は見ての通り比較的荒れているが四輪でも問題なくいけそうな未舗装路。幅は離合不能な1.2-1.5車線幅。

 ちょいちょい見かける「ダンプ通行」の看板。もう少し後でわかりやすい写真がありますが、どうやらこれ本当に走ってるっぽいんですよね。

 ちなみに、道路でいう通行不能区間の定義とは「未改良道路(供用を開始している)のうち幅員、曲線半径、勾配その他道路状況により、最大積載量4トンの貨物自動車が通行できない区間」という意味である。普通乗用車が通れるレベルの路線でもこの定義を外れないので、「通行不能区間」と言いつつ四輪で越えられるというのはありうる話なのだ。しかしここでダンプが通っているとなると…

 「山火事注意」の横断幕。これ県道じゃなくて林道で見るものでしょ…。

 「水源かん養保安林」の看板。これ県道じゃなくて(略

 ここまで普通車の離合すら難しいような道が続いていたが、このあたりでは路肩に車が停車できる程度のスペースが設けられている。そもそも一本杉峠の東側は森林も手入れされているように見えるんですよね。

 一本杉峠に向けた登り坂の途中、こんなふうに路肩が露出している箇所があった。路肩は崖になっておりデリニエータもガードレールもないが、路盤が擁壁できちんと固められているのだ。斜面から約3~4mはあろうというところで、この県道はちゃんと県道として整備されているのだ。路面は荒れているけど・・・。

 この、「一度はきちんと整備されている」というのを頭に入れたまま次のパートも目を通して頂きたい。r218大塚真壁線は、生まれつきの険道や獣道などではなかったのだ。

 と思ったら、山側にも擁壁で仕切られた一角が。林道レベルとはいえちゃんとした道ですね。

 この写真の左端を見てわかるかと思うが、道路端にそれなりに太いタイヤの轍がある。普通車にしては広いこの轍、やっぱりダンプのものじゃないかと思うんですよね。
 通行不能区間じゃないのでは?と問いたくなるが、あまり気にしないようにした。

 この辺から延々と続く緩い登り坂に体力を奪われ続ける。道中何台かバイクには出会っているが、特に何の違和感もなく上り下りしているようだ。

 ここで砂利道を横切る一本の筋が見える。写真下側。

 よーく目を凝らすと・・・、画面奥の水たまりから湧き水だろうか、水が流れ続けている。

 そう、県道を横切って。

 これは・・・、

 洗い越しだ!!!!

 同じ地点を振り返って撮る。まぁこうやって見ると水たまり以下の小さな洗い越しだが、確実に路面をえぐっている。

 確かにしょぼい水の流れであるが、そもそも晴れた日に県道の上を水が流れている時点でこの道は並の未舗装路より荒れている。石岡側から歩いてきたからこの程度でも感動を覚えて写真に撮っていたのだが、後にとんでもない洗い越し・・・いや洗いっぱなしの姿を見ることになる。

 もう1箇所似たようなせせらぎが道路を横切る。

 標高300mほどまで登ってきた(麓から+250mぐらい)。久々のハイキングそれも単独とあって適切なペースを掴めずにいる中、カーブミラーに出会う。彼もどうやら、お疲れの様子で崖に寄りかかっていた。

 まだまだ山林を歩く。撮りようによってはかなり狭い部分がある。

 先程の道よりもっと狭くなる・・・と言いたいのだが、これは1枚上の写真に見えるカーブで分岐する別の道。ほぼ二輪車専用にみえる。

 山の中に二輪専用の道・・・というのもよくよく考えれば普通ではないのだが、これも次のパートで答え合わせ。

 ここまで全く展望の効かない道だったが、夏草に阻まれながらも景色の開ける場所があった。

 峠の上部まで登ってくると路面には瓦礫のような石もちらほら見られるようになる。上に行くほど道が荒れるのはよくあること。

 路肩に境界標のようなものが傾いて立っている。これは林野庁のものだった気がする。

 何となく道路脇のブツを眺めていると、まさかのナンバープレートが落ちていた。土浦ナンバーの軽二輪ナンバー。車体はない。不法投棄か盗難車ナンバーか、あるいはそれ以外の何かだろうか。

 路面が荒れてきた。轍がしっかりあるので四輪でも全然問題なく走れるのだがそれにしても狭い。

 カーブ部分も地形を削って傾斜を抑えてあるのだが、それにしても荒削りなんですよね。

 もうそろそろ峠も間近というところで、崩壊した構造物か単なる石捨て場なのか、大きな石材が乱雑に捨ててあった。

 そしてもう少し歩いたところで、峠の頂上はいきなり現れる。木立の向こうでライダーのお兄さん方が休憩している。

真壁町(現桜川市)境

 入口脇には真壁町を示す標識が立っている。フォントから察するに相応に古いものだ。

 通行不能区間のはずだが、こちら側に向けて前方の林道の通行規制について看板が設置されている。どうやら撮影日の前の週にサイクリング大会があったらしい。ジロ・di・ちくせい。初級向けでも85kmを走る本格的な大会だ。

 林道側から県道を見渡す。よく見ると右側に「この先通行不能」の標識が倒されている。

 r218、お前やっぱり通れたのか・・・!?

一本杉峠

 県道側から峠を撮影する。峠の名称の由来はてっぺんに立つ杉の木らしいが、もしかして2本ありません?

 ところで、左前方から来て右へ抜ける道が林道で、この峠を境に左側は林道北筑波稜線、右側は林道丸山線となる。

 前者の道は名前の通り筑波山の北側に広がる山林の尾根をたどるように走る林道で、線形は悪いが全面舗装されている。r7石岡筑西線、r150月岡真壁線とそれぞれ交差する。

 右側、丸山線の標識を撮影する。林道丸山線はつくば風力発電所を経由して尾根をなぞりながら東向きに進路を変え、途中で林道岩の上線に名前を変えた後r64と板敷峠付近で交差する。こちらも狭く曲がりくねった林道だが、全面舗装されている。

 明らかに林道のものらしき峠の石標が置かれている。一本杉峠で休憩するライダーを尻目に、そろそろ行きましょう。

 次はr218の後半戦、
 真壁側の強烈な通行不能区間へ足を進める。

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最終更新:2023年6月5日