北檜山大成線の後半戦。尾花岬をパスする太田トンネルは、江戸時代以来の難所を突き抜ける。
 北海道本島最西端にも近いこの道、さあ存分に楽しもう。
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 北海道道740号北檜山大成線 第1部 [終点(R229交点)→ 大成区上浦]
 旧大成町の市街地を手前に、山側を抜けるR229と分岐して道道トレースを開始する。

 北海道道740号北檜山大成線 第2部 [大成区上浦 → 大成区太田]
 漁村が点在する日本海沿いを北西へ走る。途中、帆越山トンネルは延長1,857mを誇る長大トンネル。

 北海道道740号北檜山大成線 第3部 [大成区太田 → 北檜山区新成]
 太田漁港を抜け、延長3,360mの太田トンネルにて北海道最西端の尾花岬をパスする。

 北海道道740号北檜山大成線 第4部 [北檜山区新成 → 起点(R229交点)]
 北檜山側に入っても狭隘区間は残るが、それもすぐに終わりとなる。起点直前で少し内陸に走ってR229と再合流する。

Report 3/4
 太田地区は漁港を抱える小さな漁村。第3部はここから更に北上し、北檜山エリアを目指す。
 集落を外れると、そこにはゲートがある。異常気象時はここで通行止めになるのだろう。
 太田トンネル

 r740の目玉にして北海道道最長のトンネル、太田トンネルの坑口。

 道内国道最長を自ら名乗る「えりも黄金トンネル」とは異なり、このトンネルは全長を示すプレートすらついていないが延長は3,351m、第2位の富芦トンネル(2,733m)を引き離し堂々の第1位である。
 このトンネルを含む区間の開通は2013年のことだが、計画当初、太田トンネルは「北成トンネル」という名称であり、更に延長も2km台と短かった。その坑口は先程の坑口より1kmほど北に海岸沿いを走った地点となる。
 北成トンネルは延長2,469m部分となっており、2005年に貫通、2006年の供用を目指して工事が進んでいたが、その直前、北成トンネルのさらなる延長が決まった。
 太田トンネル内は照明が少なく暗い上に、地下水の影響か降雨の影響か、内部は霧がかかったようになっていた。

 北成トンネルはその後、南側に更に900mほど新トンネルを建設し、現在の太田トンネルに名称変更、2009年貫通の後2013年供用開始された。詳しくはリンク先に譲るが、北成トンネルのかつての坑口に向かう海岸沿いのルートが航空写真で見て取れる。
 太田トンネルを抜ける。トンネルに挟まれた海岸をすこしだけ走る。太田トンネルの西側に、北海道本島最西端尾花岬があるが、もちろんトンネル内からアクセスする手段はなく、通り過ぎている。
 日昼部(にっちゅうべ)トンネル

 長さ1,161m。険しい海岸沿いの山並みを突き抜ける。
 トンネルを抜けると、モヤが晴れて真夏の日差しが照りつける。
 人の気配のまったくない海岸道路が続く。整備状態は良好で、R229の海岸区間と言われても区別がつかないレベルだが、ここは道道だ。
 夏の海岸をひたすら走る。
 カーブの向こうは、日本海。見事な晴天になり本当に助かった。
 それにしても道路は見事に山と海の間を走っている。北檜山区の集落は前方に飛び出した山塊の更に奥に点在している。
 深緑の尾根を囲む擁壁と、海との間を走る道道。

 海岸沿いを走る道道は少なくないが、ここまで本格的な海岸区間は離島を除けば知床とr740ぐらいかもしれない。
 
 真新しい防風壁の奥には、覆道が口を開けている。
 長浜覆道

 防風壁からそのまま続くようにして、1本目の覆道。
 覆道の中は、支柱の間から海を望む典型的な型式をしている。
 次の覆道は水垂覆道。長さは48mと短い。
 3本目は、鵜泊覆道。名前のプレートが綺麗で読みやすい。

 水垂と鵜泊の2つの覆道は、1981年の竣工で実は結構古い。2013年供用されたかつての不通区間はどこまでだったの・・・?
 覆道群以降、明らかに道路設備は古くなる。

 ガードロープだけで海と隔てられている辺り、改良前のR229やR231あたりを彷彿とさせる。
 海岸区間の途中で、チャリ・・・いや、徒歩ダーを追い抜く。

 荷物をキャスターのようなもので牽いているが、移動力は徒歩のみである。r740の延長は約30km、徒歩では7時間はかかる。こんな無人地帯を大したものだ。
 旧国道のような寂れた海岸道路は、やがてセンターラインすらなくなる。
 こうなるともう険道ムードが溢れ出す。ガードロープが完全に錆で覆われているのも大事なポイントである。
 相変わらず人気のない海岸沿いに、待避所があったので車を停めてしばらく海を眺めることにした。どうやらこの先には電柱がある、すなわち集落も近いようだが見える範囲に人の気配はない。
 道路を振り返る。

 人の気配はないと言いつつも、実は先程の徒歩ダーからそこまで離れていないので海を眺めている間に追いつかれそうになった。人の気配ありましたね(笑)
 日本海といえば鈍色の荒れた海、というイメージを抱く人もいるかも知れないがそれは冬の話、この辺りは透明度の高い海水に海底は岩場となっており晴天時には美しい紺碧の姿を見せる。
 この先カーブのある突端が水垂岬といい、写真には写っていないが小さな灯台がある。

 ここからは鵜泊漁港に向け、1.5車線の旅情ある海岸区間が続く。文章を色々書かずに写真だけ上げていくので、ちょっとした徒歩旅気分を味わってみて欲しい。
 こんなところにゲート。間もなく集落!
 岩場を無理やり掘ったようなワイルドな擁壁。この向こうには鵜泊漁港!

 ここでr740のかつての未通区間は終わりを迎えたわけだが、太田〜鵜泊の工事に着手したのはなんと1974年のことで、2013年の供用まで実に39年もの年月を要している。開発道路指定から58年、道道指定から41年経ってのことである。

 先程の覆道群が1980年台前半に完成しているが、最後に開通した太田トンネル〜日昼部周辺の着工は1995年である。数々の困難を経て、太田と鵜泊は安全な道路で結ばれた
 鵜泊漁港

 北檜山区最南端となるこの漁港は、第1種漁港に指定されている。

 この漁港は非常によく整備されているが、1963年の豪雨災害を経て1966年に再建・整備されたものである。
 鵜泊漁港の船着き場には小さな漁船が数多く停泊していたが、その割には道路沿いの民家は少ない。

 実は鵜泊集落の大部分は、漁港周辺ではなく、r740より内陸側の高台に移転している。1966年に完成した鵜泊漁港団地と呼ばれる地域は字名としては北檜山区新成という地区で、2010年の国勢調査時点で人口は111人であった。

 第3部はここまで、次回第4部、完結編。
最終更新:2018年3月12日